妹ポジから正妻を目指す物語
くにすらのに
第1話
高校生になって3度目の春。
まだ少し冷たい朝の空気と暖かな日差しが緊張と期待を表しているようだ。
僕が通う
それでも先輩は卒業して、新入生が入学するので学校の雰囲気は変わる。
気楽に過ごせた2年生と違って受験生になるという重圧もある。
何より1番の変化は……。
「もうお兄ちゃんなんて呼ばないから!」
近所に住んでいる幼馴染・
特に待ち合わせをしたわけでもないのに
高校に入学した途端に身長が伸びるわけもなく、小学生の頃からほぼ変わらない小さな体が黒髪ツインテールの長さを引き立てている。
一般的に見て可愛い女の子だと思う。
なぜか小さい頃から僕に懐いていてくれて、同じ高校に通いたいからと家庭教師をお願いされたりもした。
だけどそれが恋愛に発展することはなく、
そんな可愛い妹ポジションの後輩の第一声が先ほどのアレである。
「そうだな。同じ高校に通うんだからこれからは先輩と……」
言いかけたところで
「これからは
「おい。後輩」
入学初日から生意気な口を叩く後輩の柔らかなほっぺを掴みびょーんと伸ばす。
傍からから見たらパワハラやらセクハラやら言われるかもしれないけど問題ない。
この生意気な後輩はもう妹みたいなものだ。
実の妹ではなく妹ポジションの幼馴染。
恋愛感情を抱くこともなく、だからと言って本当の妹ほど大事にもしない、程よい距離感の関係だ。
「ゆうほ! いはい! いはい!」
「これでもまだ呼び捨てにするか」
生意気な口はそう簡単には直らないらしい。
僕はお仕置きのためにさらにほっぺをびょんびょんと繰り返し引っ張る。
「んふふ。ほあのおんなのほにはほんなほとひないよね? ふまり、ほれはひんらいのあはし」
他の女の子にはこんなことしないよね? つまり、これは信頼の証。
たぶんこんな内容を喋っていたと思う。
僕としては断じて信頼の証として後輩のほっぺを引っ張っているわけではないのでパッと手を離した。
「ゆうお兄ちゃんは相変わらずスキンシップが過激だね」
「そうだな。これもひとえに
自分で宣言した『お兄ちゃんなんて呼ばない』を早々に破っていることに気付いたようだ。
「
「はっはっは。高校生になってジョークのレベルが上がったな」
「ルナは本気なんですけど!」
ぷくっとほっぺを膨らます姿はとても高校生とは思えない。
この子供っぽさに庇護欲をそそられなくもない。
同時に、僕が
「いいもん! 今日から同じ高校に通うからアピールチャンスはいっぱいあるし」
「中学生の頃からそんなこと言ってなかった? 家庭教師と教え子の恋とかなんとか」
「あの時のルナは受験生だったから恋を捨てて勉強に集中してたんですー」
「今年は僕が受験生なんだけどな……」
最初の頃はアンバランスに育った胸を見せつけるようにボタンを外したり、なぜか外で会う時もよりもスカートの丈を短くしていたけど。
本気で
「大学受験は絶対に年下彼女がいた方がいいって。勉強に疲れたらルナの胸で泣いて良いよ」
思わず胸元に視線が行く。
しっかりとボタンを閉めてブレザーを着ているのに、子供っぽい顔と体に似つかわしくない確かな膨らみがそこにはある。
成長ポイントの振り分け方を間違てしまったんじゃないかと思うレベルだ。
「妹に甘える兄なんて居ないだろ。
「そうそう。本当の妹じゃないってのがポイント。合法的に手を出せるよ」
「今日から女子高生になるお子様が手を出せるとか言うんじゃありません」
「いたい!」
僕は兄ポジションとして後輩の頭を軽くチョップする。
しっかりと後輩を教育するのも兄ポジションの役目だ。
「むぅ! ゆうお兄ちゃんはやっぱり手強い」
「また戻ってるぞ。あと、恥ずかしいからお兄ちゃん呼びを止めてくれるならそれは助かる」
「恥ずかしいっていうのは建前で、本当は恋人っぽく呼び捨てにされたいんでしょ?」
「入学初日から先輩を呼び捨てにする不届きな口はこれか?」
僕が口元を睨むと
こうなることがわかっているなら言わなきゃいいのに。
「最悪お兄ちゃん呼びでもいいよ。呼び捨てはマジで勘違いされそうだから勘弁してくれ」
「わかったよぉ。ルナも癖でゆうお兄ちゃんって呼んじゃいそうだし」
「それでいいよ。僕が兄ポジションで
実の妹ではない妹ポジの幼馴染。
付き合ったり結婚しても全然問題のない女の子から好意を寄せられて嫌な気はしない。
だけど僕がそれを頑なに拒むのにはものすごく単純な理由がある。
僕、
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