願い事が叶うと噂の神社で美少女が俺と付き合えますようにと願っていた件

@1ya12ma2to

第1話

 朝、無機質な音に起こされ、発信元でもあるスマホに手を伸ばす。

 二度寝をしないように、大きく伸びをし、下の階に降りる。


 親は朝早くから会社に出勤しているため、家には俺一人だが、そんな日常にも慣れた。

 俺は軽く朝食を済ませ身支度をし、家を出る。


 こんな当たり前の生活をしていた俺が、この後起こる出来事で一変するとは、このときの俺は知るよしもない。




☆◇☆◇☆◇




「おーい蒼。おはよう!」

「……朝から元気だな、お前は」


 突然だが、俺の名前は高橋 蒼(たかはし そう)、今年で高校二年生だ。

 中肉中背、お世辞にもかっこいいとは言えず、青春を謳歌していないようにも見えるが、俺は今の暮らしに満足している。


 そして朝早くから話しかけてきたのは俺の数少ない友達の、倉井 玲央(くらい れお)。

 背が高く、見た目も十分すぎるほど整っているため、女子に大人気だ。


 登校している今でさえ、周りの女子は玲央の事を見ると、顔を赤くしている。


 運動神経もよく、社交的で相手の気持ちを読むのが上手く、頭も良いので女子だけではなく男子にも人気がある。


 そんな完璧で、ラブコメ作品でいう主人公みたいなやつと俺が友達なのかというと、ただ単純に腐れ縁というやつのおかげである。


 小学校から高校までずっと同じだったため、話すことも多くなり今に至るという感じだ。

 

 そして玲央と一緒に登校していると、もう一人、俺に話しかけてくる人物がいる。


「玲央おはよー!そっちのおまけ君もおはよー!」

「誰がおまけだ」

「おう、おはよう紫音」


 彼女の名前は楠 紫音(くすのき しおん)。

 きれいな茶髪を肩の辺りまで伸ばし、顔はパッチりとした目に、小ぶりな鼻、柔らかそうな唇と、玲央に負けず劣らず物凄く整っている。


 体型は出るとこは出て、引っ込むところは引っ込んでいると、神様に愛され過ぎている容姿を持っている。


 玲央と楠さんは関わることも多いようだが、未だに俺に話しかけてくる理由が分からない。

 玲央といるときだけではなく、俺一人でいるときも話しかけてくるため、男子の恨み妬みが入り交じった視線が凄い。


 挨拶をされただけでも睨まれている。多分、玲央みたいなイケメンだとこんなことはないんだろう。イケメン滅ばねえかな。


 そんなこともあり、今は三人で登校するのが当たり前になっている。二人とも他にも一緒に登校する友達がいるんだから、俺に構わなくても良いと思ってはいるが、口には出せないまま、学校に向かうことにした。




☆◇☆◇☆◇




「これで授業は終了する。各自宿題をやって来るように」


 四時間目も終わり、宿題も配られたが昼飯の時間になった。いつもは弁当を作ってもらっているが、今日は作れなかったらしく、千円が机の上に置かれていたので、その千円で近くのコンビニに行くことにする。


 学食もあるが、人が多く具合が悪くなるため、いつもコンビニでパンやおにぎりを買って教室で食べている。


 俺は素早くコンビニで買い物を済まし、学校に戻ると、いつもとは違うことが起こっていた。


「俺の椅子が、使われている……」


 そう、俺の椅子が勝手に使われていたのだ。使っているやつを見ると、いわゆる陽キャのやつだった。周りをよく見てみると、楠さんもいた。


 当然、席を取り返す勇気も度胸もないため、俺は諦めて昼飯を食べるところを探すことにする。


「どこかあったか?屋上は使えないし、他にどんなところがあったっけ?」

 

 静かにゆっくり食べられる場所を探していると、


「あ、近くに神社あったな。あそこなら静かに食えるかも」


 俺はすぐに一階に降り、神社に向かうことにした。


 


☆◇☆◇☆◇




「よし、誰もいないな」


 神社に着き周りを見渡すと、予想通り誰もおらず、俺は近くのベンチに座ることにした。


 丁度参拝客からは見えないところにベンチがあったためそこに座った。


 俺は買ってきたパンやおにぎりを食べきると、周りにごみがないかと確認し、落ちているごみを袋に入れごみを捨てようと、コンビニに向かうため、帰ろうとすると声が聞こえた。


 俺はバレないように影から覗くと、そこには楠さんがいた。


 ここに楠さんがいることもビックリしたが、どんな願い事をしているのかも気になったため、耳を澄ますことにした。


 だが、この判断が悪かったのだろう。俺は楠さんの願い事を聞いたことをすぐに後悔することになる。


「蒼と、高橋 蒼と付き合えますように!」



 

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