第44話 奥義・白パンツブレイク大回転!
メリーゴーランド前にクラウチングスタートの為の台がわざわざ置かれている。私はそこに足をかけてしゃがみスタートの合図を待っている。
『『『がんばれ!がんばれ!がんばれ!ゲ・ス・ト!がんばれ!がんばれ!がんばれ!ゲ・ス・ト!イキリビッチをわからせろ!わーーーーー!』』』
同僚のサキュバスたちがポンポンダンスでお客さんたちを
『さあ準備も整ったぜ!レディぃぃぃぃぃぃいぃいいいいいいいいいいいいいいい!』
ロミオの声が響き渡る。私はそれに合わせて腰を高く上げた。
「あっ…ん…」
いきなり精気が私の体に染み込んできて、快感に声が漏れてしまった。
「ナイス白パン!」「グッジョブ白パン!」「清らかです白パン!」「白パンださっ!くすくす」「白パンかわいいww!くすくす」
忘れてた!私今生パンだった!後ろのお客さんが私が突き出したお尻をガン見してる。サキュバス共はクスクス笑ってる。これがセクシーバトルの羞恥!本番にいきなりこれ来たら、ヤバかったかもしれない。あとでロミオに感謝しよう。
『ごおおおおおおおおおおおおおおおおお!ひゃっはーーーーーーーーーーーっーーーーーーーーーーーーーー!』
私は一気にスタートを切る。丁度今手に入れた精気をそのままダッシュにまわす。生身の人間には到底出せないような速度に一気に加速する。そして目の前に一人目の妨害役のゲストの姿が見えた。
「こいやああああああああああああああああああああ!」
すごく血走った目で、私を睨んでる。すごく怖いです。男ってそんなに女の体に触りたいのか…。私女だけどそんなに触り心地のいいものなのだろうか?少なくとも自分で触って楽しかったり気持ちよかったりしたためしがない。
「あれぇえ?そんなぁ!」
お客のタッチに触れることなく、私は加速した勢いでサークルギリギリを踏みながら走り抜ける。ルール上はセーフのはず。
『『『ブーーーーーーーーーー!!!』』』
オーディエンスの客とサキュバスたちからブーイングが聞こえた。いけね。外連味忘れてた。ただ走ってたら駄目なんだった。すぐに次のゲストのサークルゾーンが現れる。お客さんは例によって私のことを血走った目で見ているが、気がついた。その視線はまっすぐ私の胸に刺さっていることに。まず間違いなく、パイタッチを狙ってくる。これはチャンスだろうと思った。名誉挽回を狙う。私はお客さんの正面に向かってまっすぐ走っていく。
「おっぱい!いただきます!」
お客さんの右手が真っすぐ私の胸に伸びていく。だから対処は楽ちん。私はその手が触れる前にジャンプする。そして伸びてきた手の上に両手をついて跳ねる。そのままお客さんの頭の上でバク宙を決める。そしてお客さんの後ろに着地する。
『トリックが決まったあああ!お客の手を使ったロンダート!そしてそこからの頭の上でのバク宙!初心者にしては上出来だぁああ!パンチラもグッジョブ!』
『『『おおおおおおおおお!グッジョブ!』』』
近くのお客さんたちと飛び越えた妨害役のお客さんから精気がそこそこ集まってきた。これが外連味の効果!
「へぇやるじゃねぇか!だがこの俺を果たして超えられるかな!しゅ!しゅ!」
次のお客さんの姿が見えた。何故か上半身裸で、その上ボクサーパンツを穿いている。…ノリがいいなぁ。
『さて序盤の難関が来ました!こちらのゲストさん。ハンドルネーム:インキュバスになりたいボクサーさん。普段はSEをなさっていますが、趣味で長年ボクシングをなさっているそうです。なお元カノは黒髪ロングの清楚系でしたが、最近浮気されて捨てられたそうです。その反動でパークでのレンカノの御指名はもっぱらギャル系ばかりとなっております。本日は日頃の鬱憤をぶつけたいとのことだそうです』
「八つ当たりじゃない!?」
「へ!どうせあんたも清楚系のフリしたビッチなんだろ!ざまぁしてやる!」
「私はビッチだけど!たぶん浮気はしないタイプだから!!」
私はお客さんの正面に飛び込み、タッチが来るのを待ち構える。
「ビッチはみんなそう言うんだ!しゅ!」
さっきまでのお客さんと違い、わりとするどい突きっぽいタッチが迫ってくる。狙いは…胸なんだよなぁ…。だけどちょっと余裕がなくて、ただ体を逸らして避けるだけになってしまった。
「さっきまでの勢いはどうした!魅せてくれよ!あんたの生き様って奴をな!しゅ!しゅ!しゅ!」
お客さんの無駄に熱いセリフがすごく暑苦しい。だけど流れるように突いてくる連続パイタッチには鋭さがあった。それらは避けられないほどではなかったが、外連味を入れる余裕がない。
「くっ…ここまでなの…ごめん…オリヴィアさん…はっ!」
その時だ。この間のティッシュ配りの修業を思い出した。相手と感情の波を重ね合わせ共感するあの技術。私はその感覚を思い出す。
「あなたと重なる!『共感の深奥』!!」
イメージするのは波。私から放たれる波、お客さんから出てくる波。そして相手の本音が隠れる感情を探し出し、それを
「…この感じは…!?あんたは…俺のことを…俺の悲しみをわかってくれるのか…」
私の波がお客さんの放つ悲しみの感情に寄り添い、共感が完成する。私にお客さんの悲しさが少し流れてくる。同時にお客さんの動作に纏わりつく感情の流れの情報も私に流れ込んできた。感情が動けば体も動く。感情を知ることはすなわち、相手の動作パターンを見抜くことにもつながるのだ!お客さんの動きはすべて掌握した!
「ええ、だからあなたを癒してあげる!」
お客さんのパイタッチ動作の癖をすべて見抜いた私はリズミカルなステップを踏みながら、お客さんのパイタッチを余裕をもって躱していく。いまなら外連味を入れることができる!そしてしゃがんで背中の方に手を置いてお客さんに向かって大きく開脚!迫ってくるパイタッチを体と足をグルグル回しながら躱す!
『で、出たーーー!ブレイクダンスとかでよく見る開脚旋回だぁ!!!おまたおっぴろげて高速でグルグル回ってるぅ!パンツが丸見え全開だぁあああ!ぎゃははは!ストリップでもそんな動きしねえだろ!ぎゃははは!いーひひひ!ウケるぅ!』
そして躱しきったあとそのまま逆立ちへと移行し、そこから腕だけの力でお客さんの上をジャンプして飛び越える。サークルを超えてから着地し、お客さんの方を振り向くと。
「白パン大開脚…なんて清らかなんだ…心が洗われていく…真っ白に…」
お客さんは膝から崩れ落ちて地面にへたりこむ。だけどその顔は何処か安らかだった。彼女に捨てられて傷ついた彼の心の悲しみは今ここに消えたのだ。…まあパンツ見せただけなんだけどね…。でも癒されたならいいか。なんか納得はいかないけど。
『『『花びら大回転じゃぁ…尊い…』』』
周りのお客さんたちは私の方をまるで悟りを開いた聖人のような眼差しで両手を合わせて拝んでいた。賢者タイム?…馬鹿だなあ…。そしてサキュバスたちは、なんかすごく微妙そうな眼差しを向けている。この視線が一番傷つく!今のブレイクダンスモドキの動きで、すごく精気が集まっていた。ドローンの動画配信経由でも微々たるものではあるが、精気が集められた。ようは客には受けているということだ。私は修行の確かな手ごたえと、女として何か大事なものを失ったような気持ちを引きずりながら次のポイントへと走った。
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