サキュバス・パークへようこそ! 遊園地に閉じ込められてるサキュバスだけどエッチなことが苦手なので人間に戻るために闘技場で戦います!
園業公起
シーズン1 世界一煌びやかなる監獄と、剣持たぬ乙女
プロローグ 運命に抗うサキュバス
「夢咲操。君は本能を受け入れる気になったかい?」
目の前にいる男装の麗しい騎士が私にそう問いかけた。
煌びやかな鎧を纏った美しい女。
物語に出てきそうな王子様のようないでたちであり、一切肌は晒してない。
なのになぜか淫靡な雰囲気が彼女には付き纏っていた。
今日この日を迎えるまでに私は散々な目に会った。
不慮の事故のせいで、この身はサキュバスになってしまった。
社会はサキュバスを恐れている。だから私はこんなところに放り込まれることになってしまった。
そして闘技場なんかで戦う羽目になってしまったわけだ。
『さあ!御集りの紳士の皆さま!本日決闘するサキュバス・ガールたちのご紹介をさせていただきます!』
『『『『『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!』』』』』
男たちが興奮の雄たけびを上げる。なんとも下品な趣味だと思う。女たちを戦わせてそれを楽しむなんて。
ここ帝都サキュバス・パークは、こんな奴らを相手にサキュバスの女たちが男たち相手に様々な興行を行っている。
男たちを愉しませ興奮させその身から出させた精気を私たちは啜る。
高まっていく歓声に反して、私の胸の奥はしんしんと冷たくなっていく。
私は客の男たちを心底軽蔑してる。だけど彼らから精気を奪わないと私たちは生きられない。
今でもこのサキュバスの呪われた生態を、私は恨めしく思い続けてる。
『その姿こそ凛とした新進気鋭の正統派騎士!だがその鎧の下にはあまりにも淫らで甘い蜜が滴る果実がある!帝都サキュバス・パーク序列第3位!ユリィィィィシーーーーーーーーーーーーズゥ!』
目の前の騎士の紹介と共に客の興奮がさらに高ぶる。それと共に客席から微かに精気がユリシーズの方へ流れていくのが感じられた。
ユリシーズはその精気を吸収し、身にまとう魔力に変換した。
戦闘能力が一段くらい跳ね上がったのがわかった。
これが人々が恐れるサキュバスの力。
男たちから精気を搾取し、その身を無限に強化し続ける。
この呪わしい生態故に私はここに閉じ込められた。
『対するはなんとサキュバスになってまだ一月も立ってない新人!どうぞ彼女をご覧ください!清楚にして可憐!今どき珍しい大和撫子と言わんばかりのその姿!ですが騙されてはいけません!彼女はあれでもサキュバスなのです!あれほど見事な擬態も珍しいでしょう。恐ろしい!なんと恐ろしい!彼女こそがまさしくサキュバスの恐ろしさを証明しているのです!清らかなふりをして男を貪る淫魔。貞淑も、貞節も、貞操も彼女にはないのです!なのにこの新人!我々を挑発してやみません!彼女が自分につけた源氏名は『
和服来てれば大和撫子か。随分とボキャブラリーに乏しい。
このパークのサキュバスたちにはおかしなルールがいくつもある。
本名の代わりにここでは源氏名を名乗る。
その源氏名はすべて男性名に限るのが一種の不文律だった。
人間としての本名を捨てさせ、男に媚びを売ることを強制させるのに、名前は男でなければいけないという。
私たちは人間の女ではなく、サキュバスという女の形をした何かとして扱われている。
だけどどう名乗るかは自由だった。
パークのサキュバスたちは全員処女だ。男を知る前のサキュバスだけがここにいる。
当然私も処女を強制されてる。
だからありったけの皮肉を込めて、童貞の貞とかいてタダシと私は名乗ることにした。
彼らは私たちを淫乱だと蔑むのに、そんな経験さえ私たちにはない。
ここは矛盾の牢獄。
『『『『『『『タダシ!タダシ!タダシ!タダシ!タダシ!』』』』』』』
観客たちが私の源氏名を呼ぶ。
期待感故にだろう。観客が放った精気が私の方へと流れ込んでくる。
精気がこの身に吸収され、私は心の奥から微かに湧き上がってくるような充足感を感じた。
それは同時に体の芯をじわりと熱していく。
「っ…ん!」
お腹の中から肌の方を撫でるような快感が走っていく。
サキュバスの本能は呪いだ。
こんな気持ち悪い感覚が、とてもとても気持ちいい。
「気持ちよさそうに頬を染めてるね。受け入れたのかい?」
「いいえ。私は受け入れない。私が受け入れるのは、今味わっているこの理不尽だけ。それだっていつか超えて見せる!」
吸収した精気が私の魔力と闘気に変換されていく。自分の戦闘力が上がっていくのがわかる。
だけど足りない。目の前の騎士に勝つには精気が足りない!まだまだ足りない!
だから男たちから搾取しなければならない!
私は纏っている振袖に手をかけて思い切り引っ張り上げる。
事前に細工をしておいた。服にそれとはわかりにくように切れ目を入れておいた。
引っ張ったりしたら、派手にバラバラになるように。
『『『『『『『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお』』』』』』』
馬鹿みたいな怒声が闘技場いっぱいに響き渡る。
私の服がちぎれ跳び宙を舞う。
そして観客の目に映ったのはこの私の肌。
今の私はいわゆるビキニアーマーを纏っていた。
ビデオゲームの中の女戦士くらいしか着ないような破廉恥な服。
観客の興奮の感情すべてがこの私に向けられる。
そしてありったけの精気がこの私に流れ込んでくる。
私は角と羽と尻尾を出して、精気を受け入れる。
これらの器官は露出すると精気の吸収効率があがる。
だからどんどん私は強くなっていく。
「ふふふ。君は立派なサキュバスになったね。男たちを魅了し操り精気を出させる。でもまだ受け入れていないと言う」
ユリシーズは何処か寂し気に微笑む。
私のことを多分憐れんでいる。
受け入れれば楽になれるのにと。
「いいえ受け入れません。確かに私はサキュバスです。でも人間をやめたつもりはありません!私はサキュバスの生態故に自分を曲げたりしない!自分の感情を押し殺したりしない!誰かに媚びて従う運命なんて絶対に受け入れない!」
「そうか…。君は面白い子だね…。ではその覚悟。このボクが試してあげよう!」
凛とした戦士の目で私を睨み、剣を抜くユリシーズ。
私も刀をさやから抜き、その切っ先を向け。
二人は闘技場の中心で切り結び合った。
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