○○○からの卒業⑦
史暗は迷い始めていた。 アドバイスは本人が中二病だからそう言っているだけなのかもしれない。 もっと普通の友達に聞けば話も変わってくるのかもしれない。
ただ自分自身も、告白するために仕方なくという気持ちだっただけだ。
―――そこまで言われたら、な・・・。
―――どうしよう・・・。
―――姉さん・・・。
そう考えた時、雑誌に“付き合いたくない男ランキング”の第二位に“シスコン”があったのを思い出す。
―――ハッ・・・!
―――自覚はなかったが、もしかして俺ってシスコンなのか!?
姉も一位から三位まで全てに当て嵌ると言っていたのだ。 つまりシスコンもそこには含まれている。 特別な感情を持っているつもりはないが、確かに何かあれば姉に意見を聞いてきた。
―――姉さんの言っていることは全て正しいと思っていた。
―――それがもう間違い!?
―――だとしたら、いつまでも姉さんを頼っていては駄目だ!
―――これからは自分の気持ちを優先しよう。
―――俺の本当の気持ちは?
―――・・・元々俺は、中二病を止める気はなかった。
―――だとしたらもう答えは出ている。
「俺はこのまま、変わらない!」
そう覚悟を決め拳を握り締める。 メラメラと瞳に炎が宿る気が何となくしながら噛み締めていると、声をかけられた。
「おーい、史暗ー。 もうすぐ卒業式が始まるから廊下に並べー」
「あ、はい」
男子生徒の声で我に返った。 教室を見ると生徒はもう自分しかいなかった。 廊下へ出ると中二病の三人を見つける。
「あ、あのさ」
声をかけると三人は一斉に史暗を見た。
「俺、決めたよ。 中二病は止めない。 このままで勝負をする」
そう言うと三人は不敵に笑った。 真ん中の学ランを羽織っている彼はサムズアップして歓迎している。 古臭いポーズな気もしたが、史暗はそれを格好いいと思った。
「あれ? もしかして史暗、その恰好で卒業式に出るのか?」
三人から視線を外すと普通の友達が目を丸くして尋ねてきた。
「当たり前だろう?」
「うわぁ、マジか。 勇気あんなー。 今日はたくさんの保護者が来るっていうのに」
「それがどうしたんだ?」
「恥ずかしくねぇの?」
「恥ずかしい? どうして? こんなにカッコ良い姿なんだ、恥ずかしがらず堂々としていればいい」
「流石だな、史暗。 お前以上に勇気のあるカッコ良い者はいないよ」
「君もどうだ? 中二病はいいぞ」
「いや、遠慮しておくよ」
クラスメイトは引きつった笑いを堪えながら足早に進んでいった。 史暗もその後を追い体育館へ移動する。
―――よし、折角中二病でいると決めたんだ。
―――中学の卒業式は人生で最初で最後。
―――中二病を全開にして楽しもうじゃないか!
―――・・・といっても、卒業式はほとんど席に着いてばかりだし、つまらないんだよなぁ。
卒業式が始まり、順調に式は進んでいく。 後半になると三年生だけによる合唱の時間がきた。
―――キタキタキター!
―――この時間を待っていたぜ!
曲名は『旅立ちの日において』 歌詞を全て中二病に替えて歌った。 音程もリズムも無視だ。 だが楽しく歌っている時横から先生に叩かれた。
「いたッ!」
「今日で最後なんだぞ、真面目に歌え」
「そんなの俺らしくないじゃないか!」
「今日は恰好もいつもより派手だし」
「昨日まで許してくれていただろう」
「昨日までのお前は少し控え目だったからな。 大目に見ていただけだ」
そう言って先生は去っていく。
―――ふん、そんなもん知るか。
気にせず中二病の歌詞で歌っていたら、また叩かれたことは言うまでもない。 合唱が終わると綾音がこちらを向いて笑ってくれた。
―――綾音さんはやっぱり中二病の俺が好きなんだ。
―――よし、卒業式が終わったらいよいよ告白だ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます