覚醒する記憶
@togami922
第1話 白の部屋
暗い……何も見えない……ここはどこだろうか。
確か俺は……ガルシオさんと一緒に依頼をこなして、その時に死神に出会って……ソラリスが助けに来て……それで……そうだ、俺は彼女を庇ったのだ。
だが、不思議と刺されていたであろう腹部に痛みは感じない。
どういうことなのだろうかと数分考え、一つの結論にたどり着いた。
「まさか……俺、死んだのか?」
それならば致命傷を受けた傷が無くなり、この闇一色の空間にいる理由にも納得がいく。
……と、いうことはここが死後の世界なのだろうか。
しかし、死後の世界というものは随分と寂しい場所なんだな、と内心で残念に思いつつ、辺りを見渡す。
だが、どんなに目を凝らしてみても、何もない世界だった。
「……どうしようか」
できることならあの世界に戻り、彼女たちが無事なのか確かめたい。
……だが、死んでしまった今となってはどうすることもできないだろう。
ああ、こんな事になるんだったらもう少し彼女と色んな事を話しておくんだった、と後悔した。
「ーー?」
なぜ、そんな事を思ったのだろうか。
自分でも不思議で仕方がなかった。
正直、俺は自分を無情な人間だと思っていた。
他人とは親切にしつつ、だが一定以上の関係にはならない。そう決めていた。
それに本当の自分は、自身のためなら他を犠牲にする事を厭わない人間だ。なのに……
「はは……」
口から笑い声が漏れる。
まるで馬鹿みたいだ。自分の為に他を犠牲にする奴が、何で他の為に自分を犠牲にしているのだろうか。
「俺は……本当に何をしているんだろうな」
これほどまでに矛盾した行動をした俺は、よほどの大馬鹿か、ただのーー偽善者なのだろうか。
ー
ーー
ーーー
ーーーー
どれだけ時が過ぎただろうか。
「ッ……なん、だ?」
突然、自身の目の前に突然光が差し込んだ。何事かと思う暇もなく、その光は徐々に明るく、広がっていくと、黒一色だった世界を真っ白に染め上げーー
ーーそして気づくとそこに広がっていた世界は、小さな白い部屋だった。
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