【短編】追放された冒険者~パーティどころか国から追放されましたが、魔王城で最強の門番をしています~
原作は↓になります。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054918072343
こちらも一話目に手を付けづらかったので2話目を改稿しています。
いくつか注意はありますが読みづらかったわけではありません。
ただ、ある事情からほぼ全面的な書き直しになっています。
詳しくは下部解説にて。
なぜだろうか、不意に思い出してしまった。 遠い日の記憶──文字通りに世界が反転した忌まわしい日を回想し、俺は流れた年月を指折り数える。
あれから──そうか。 もう七年が経つのか。
必死で、無我夢中で冒険者ギルドから逃げ出し、そのまま街からも逃げ出したが、そこももはや俺の居場所ではなかった。
認めたくなくても理解していた。 せざるを得なかった。──俺は人間ではなかったという、その残酷な事実を。 この人間の国のどこにも、もはや俺の居場所はないんだという、その暗澹たる現実を。
全力で走った。 走り続けた。 失われた、もはや戻ることのできない居場所を見る辛さから逃げるように、俺は一心不乱に駆け、人間の国を抜け出した。 そうして逃げ込んだのが魔族の国だ。
魔族の国は過酷だった。 弱肉強食──自然界の掟に知性のある、より大きな力を持つ存在が従っている。 力がなければ生きることすらままならない地獄だ。
生きる為に力が必要だったからとにかくレベルを上げた。 経験値の為なら、人も魔族も魔物も関係なく殺した。 生きるために殺し続けた。
力を付ける──それは俺にとっては自分の本性に近付いていくことに他ならなかったようだ。
額から伸びたツノと、身体全体に刺青のように広がった呪印。 強くなるほどに顕著になっていった、俺が人間でなかったことの証。 今の俺を見て人間だと思うやつはいないだろうな……
おっと。 つい昔を懐かしんでしまった。 いくら暇とは言え今は仕事中だ。 自分が望んで用意
弛んでいた気を引き締めて背筋を伸ばし、俺は背後の建物に意識を向ける。 巨大な石造りの門とその奥に鎮座する禍々しい城。 この門を守るのが俺の仕事──そう、今の俺は魔王城の門番だ。
仕事を求めて魔族の国の
力が絶対の魔族において、力を示した俺はむしろ魔王に歓迎された。 魔王に喧嘩を売っていたらどうなったか知れたものではないが、そんなつもりは欠片もなかった。 俺はただ仕事がほしかっただけなのだから。
魔王には四天王のさらに上に位置する副王の椅子を用意されたが、俺はそれを断った。 仕事はほしいが幹部というのは性に合わないからな。 俺にはこの仕事で十分だ。
しかし暇だ。 城への出入りはさほど頻繁ではないため、一日の大半はただ黙って立っていることになる。 退屈でまた気が弛んでしまいそうだ。
最大の敵と戦いながら誰も訪れることのない門の前に立っていると、遠くから魔王城に向かってくる一団が見えた。 まだ距離は相当離れているが、俺の目はそいつら一人一人の姿をはっきりと捉えていた。
二週間前に人間の国へと向かった一軍──四天王の一翼を担う不死王の軍団だ。
門の近くまでやってきた軍団の中から、一人の男が進み出てくる。 纏った威厳と迫力は他の奴らとは段違いだ。
「おかえりなさいませ」
俺はその男──不死王ハーデスに頭を下げる。
「クロード君ですか。 ご苦労様です」
漆黒のローブに身を包んだ不死王は、俺に丁寧に一礼を返してきた。
四天王が門番に丁寧に接するその異常さに、軍団の誰一人として反応しない。 いつものことだからな。 こいつも俺にぶっ飛ばされた口だから、俺の前だと借りてきた猫のように大人しい。
「それで、今日のご用件は?」
「戦利品を実験室に運ぶ為ですよ」
そう言って指差す先には、馬車で引かれた牢屋があった。 その中には老若男女、様々な人間が詰め込まれている。
こいつの実験室送りとは運がないやつらだな。 死ぬまで切り刻まれて、死んだ後はアンデットとして第二の人生の始まりだ。
正直、見慣れた光景だ。 見て楽しいものでもない。 いつものようにちらっと横目で見るだけで済まそうとしたが、中にいた二人の人間の姿に目を疑い、思わずまじまじと覗き込んでしまった。
「どうかしましたか?」
怪訝そうなハーデスの言葉を無視して、俺はその二人をしっかりと確認する。
──アランに……リナか?──
間違いない。 昔の面影を残しながら成長したかつての仲間の姿がそこにあった。
「ハーデス様。 中の人間を少し宜しいですか?」
丁寧に確認したがそんなのは形式上だ。 こいつは俺に歯向かえない。 有無を言わさず二人を牢から出させた。
怯えながら引きずり出された二人が、ハーデスの部下につかまれて俺の前に立たされる。
「久しぶりだな」
「……?」
「……女神様……女神様……お助け下さい」
アランは呆けた顔で、こちらを見る。 リナは青ざめた顔でうつむき、助けを求めるように呟いていた。
「覚えていないのか?」
「魔族に知り合いなどいない!──ペッ」
両手を縛られたアランは、半ばヤケクソ気味に唾を吐きかけてきた。
その反応を想像しなかったわけじゃない。 それでも、胸を吹き抜ける寂寥感に俺はため息を抑えられなかった。
どうしてそんなことを考えてしまったのか……いや、分かっている。 何かの啓示のように昔のことを思い出して、あの時の気持ちまで思い出していたんだ。 いい仲間だったから、だからこそ大きかった絶望を。
時間をおいた今、ひょっとしたらもう一度やり直せないか……そんなあり得ない期待をしたんだ。
「……そうかよ」
顔にかかった唾を吹いた手で、俺はアランの首を刎ねた。
右手から、鮮血が滴り落ちる。 その手を見つめる。 あの日、俺の身体を貫いたアランの命を奪った、その証で赤く染まった手。
これが、復讐を果たすという事か? 何も感じないな。 喜びも、悲しみも、驚くほどに何も感じない。
地面に転がったアランの首を見る。 その顔は何が起こったかも分からないまま逝ったことを示すように、面食らったような表情を浮かべていた。
アラン、俺の最後の餞だ。 拷問の連続より、楽にあの世に行けただろう?
「私の実験台を、壊さないでもらいたいのですが」
「……機嫌が悪いのが分からないか? 消滅させるぞ」
殺気を向けると、ハーデスは顔を引きつらせ、「冗談ですよ」と引き下がる。
「この女は、俺が貰う。 文句があるなら、力で奪うが?」
「いえ、クロード君の珍しい姿を見れたので、それはあげますよ」
ゴブリンの苗床にするより面白そうだと、ハーデスは言う。 本当に悪趣味なやつだ。
「お姉ちゃん、どこ? お姉ちゃん?」
リナを連れて行こうとした俺の耳に、誰かを呼ぶ小さな声が聞こえた。 牢屋の中で、一人のガキが不安げに周りを見回すようにしていた。
俺は傍らのリナを見る。 牢屋からいなくなった女と言えばリナしかいない。
「お姉ちゃんとはリナの事か?」
「うん、そうだよ」
俺を見て……いや、顔はこっちを向いているけど何か変だ。 微妙に俺からずれた方に顔を向けているし……目の焦点も合ってない。
隣にいるリナに対しても同じだ。 目の前にいるのに必死に探している。
ひょっとして目が見えないのか?
「リナ、このガキはなんだ?」
そう問いかけても、彼女は現実逃避を続けていた。 ガキの声にも反応しない。
「その子も、サービスしますよ?」
どうしたものかと考え込んでいると、ハーデスが俺にそんな提案をしてきた。
こんなガキを助ける理由は俺にはない。 しかし……
横目で見るリナの様子に、俺は一つため息を吐く。 いつまでもこんな状態でいられたらたまらないな。
「……もらっとく」
結局、俺はハーデスの提案に乗り、二人を連れて行くことにした。
まずシンプルな文体で非常に読みやすかったです。
全体的に短いのもあって全話読みましたし、途中で理解できなくて詰まるようなことはありませんでした。
ただ、私は描きこむことをよしとする人間なのであまりにタイプが違いすぎ正しく批評をすることができません。
描写の参考までに、私ならこう書くと、あっさり塩ラーメンを濃厚豚骨ラーメンに魔改造したような感じになりました。
段落開始時の空白についてはコラムを読んでください。
それと『…』については2つでワンセットにして使うものです。
句点代わりの『?』や『!』の後に空白も絶対で
この3点には気を付けてください。
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