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「あのね」


「うん?」


「目。もしかしたら、見えるようになるかも、しれないんだって」


「そっか」


 帰り道。彼女が抱きつくので、それに彼も応じて、ゆっくりと、歩く。


「目が見えるようになったら。きっと、いいことがたくさんあるよ。俺なんかがいなくても、大丈夫になる」


「あなたがいなくて、大丈夫に?」


「そう。あなたは見えていないけど、綺麗な見た目をしてる。他のどんな女性よりも、綺麗だから」


「うふふ。うれしい」


「だから、俺なんかは気にしないで、人生を謳歌するといいよ」


「わかった。ありがと」


 抱きつく。キスをする。いつものように。


 そして、唇が離れてから。手を繋ぎ直して。笑顔で歩く彼女と。泣いている彼。

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