⑥ ジョニーの決意 ~マーティンの語り~

「ジョニー、きみは正気か? 本気で言ってるのか」

 親友の出した提案――それは信じがたいものだった。

 淡い色の瞳が、今日は暗い色を宿して見える。

「だったらマーティン、きみはもも叶ちゃんと永久に会えなくなってもいいのか」

「それは……」

 そう言われると、さすがに一瞬言葉に詰まる。

 だが。

「そんなことが、許されるはずない――もも叶を、本の中にさらうなんてことが」

 ジョニーの表情は変わらなかった。

「きみが協力しなくても僕はやるよ」

 立ち上がり、テーブルごしに親友の襟首をつかむ。

「ふざけるな。きみだとしても許さないぞ」

 ジョニーはされるがままにしていたが、その瞳はひるまずにこちらを見返してくる。

「たしかに一時つらい思いをさせるかもしれない」

 ぱし、と胸倉をつかんでいる僕の手をジョニーは握った。

「そうなっても、この手でもう一度笑わせてみせるから」

 こぶしを握るこぶしに、さらに力が加わる。

「きみにはその自信がないのか。マーティン」

 そう言われた瞬間、手が震えだした。

 胸倉ごと、親友を突き放す。

 胸元を緩めながら、ジョニーはふっと笑った。

「共同戦線をもちかけて安心させるつもりが、かえって動揺させたかな」

 冷静な口調で放たれた挑発的な言葉が、神経にさわる。

 彼の言う通りだった。

 僕は動揺していた。

 自分が――迷っていることに。

「返事は保留でいいよ。今日のところはね。でも正直、長く待つつもりもない」

 去り際のジョニーの言葉が追い打ちのように耳にこびりついた。

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