⑪ 星降る島はどこに

 途中下車したそこは、楽園みたいにきれいな島だった。

 ヤシの木や赤やオレンジのフルーツに囲まれて、遠くの丘には虹がかかってる。

 木々の葉っぱには星やオーナメント、クリスマスリースが光ってて、島を囲ってる真っ青な海で泳ぐイルカさんはサンタさん帽子を被ってる。ところどころにあるログハウスのような小さなお店のショーウインドーにも、サーフィンするトナカイのぬいぐるみや、水着姿のサンタさんの置物なんかのクリスマスグッズがいっぱい。

「不思議。真夏なのにクリスマス?」

驚くわたしに星崎さんが答えてくれる。

「オーストラリアなんかの国では、12月は真夏なんだよ。ここは、南半球と同じ気候みたいだね」

 へぇ。

 メルヒェンガルテンにもいろいろな場所があるんだなぁ……。

 砂浜をしばらく行くと、盛りあがってる人たちに会った。バーベキューを楽しんでるみたい。野菜やお肉を焼く機械の上には、ローストビーフと七面鳥?? ビーチパラソルの上には生クリームといちごの乗ったクリスマスケーキ。砂浜の上に網を敷いて、大胆にテレビまで持ってきてる。

 ふふふ。すっごく変な感じ。

 みんなは、今、スイカ割の真っ最中みたい。

 アロハシャツを着た男の子が目隠しされて、木の棒を持って、スイカに向かってふらふら歩いてる。それを二人の女の子が応援。

「右だよ、もっと右!」

「やだ、嘘おしえたらだめよ。左よ」

 ……ん?

 この声は……。

「マーティン、あたしの言うこと信じられないの?」

「マーティンくん、ももぽんに騙されちゃだめ!」

 すっごく、聞き覚え、あるよっ。

「少年、まっすぐだ。二人とも嘘ってこともあるんだぞ」

「かみやん。余計混乱させるアドバイスしないで」

「け、結局、どの方向が正しいんだ……?!」

「もうマーティン、しっかりしてよ。夢と星崎王子に勝利祝いのスイカ食べてもらうんでしょ」

 たまらなくなって、わたしは走り出した。

「ももちゃん、せいらちゃんっ」

 「ここは、すごく質の高いブーフシュテルンでできてる。このところ急速に波が押し寄せて、水没しそうになっていた島なんだ。ある尊敬すべき大人たちが必死で星々をかき集めて復旧作業に励んでた。僕らも急遽、それに駆り出されたんだ」

 マーティンがそう説明してくれる。

 そう。

 スイカ割りではっちゃけてるグループは、ももちゃん、せいらちゃん、マーティン、神谷先生の四人だったの。

「ここには、仲間の状況を実況中継してくれるテレビがあるから、ずっと見てたんだ。夢未たちのこと」

 マーティンが言って、えぇぇっ。

 せいらちゃんとももちゃんもきゃっきゃって手を合わせる。

「ハラハラドキドキだったわね~」

「もうどうなることかと思った」

神谷先生が、星崎さんをつついて、

「『オレなんかのために、心も身体もこんなにぼろぼろになって。二度としないって誓えるか』ひしっ! 超かっこよかったですよ」

「龍介、海に投げられたいか」

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