⑱ あたし自作のエピローグ

「おばさま。わたし、彼を愛してるの。誰になんと言われようと、とめられない。わたしは、わたしの好きな人と結婚します」

これが、あたしの考えた、メグの台詞。

満員御礼の体育館の舞台に、万雷の拍手が沸き起こる。

大成功。それはいいんだけど。

ちょっとだけ、あーぁって感じ。

舞台でなら、堂々と愛の言葉が言えるのに。

彼が気持ちを打ち明けてくれたときには、なんにも言えなくて、それどころかみっともなく泣きじゃくっちゃって。

あのあと夢っちたちへの説明に困ったのなんのって。

あたしはスポットライトを浴びておじぎしながら、ここにはいない彼を想う。

あれから、会ってないの。

あたしの気持ち、伝わったかしら……。

 カーテンコールを終えたあたしたちは、衣装のまま体育館袖でお客様にご挨拶。

 夢っちは役者じゃないのに、星崎さんからガーベラの花束なんかもらっちゃって、照れてる。

「四姉妹の長女、最高だったよ、せいら」

「ありがとう。ももぽんのおばさまも、キュートだったわよ」

 星崎さんは、あたしを見つけると、近づいてきて、こう言った。

「はい、これはメグさんに」

そう言って差し出されたのは、薔薇の花束!

「塾の仕事が忙しいから渡しといてくれって、匿名の恋人から」

「匿名って、星崎さん、それ言ったら誰かわかっちゃいます」

「はは、夢ちゃん、それもそうだね」

おばさまになったももちゃんの髪に、片手でかわいい花環を乗せながら、同じく舞台を観にきてくれたマーティンくんは、じっとあたしの手元を睨んだ。

「真っ赤なバラを残してくなんてなかなかやる……」

花環を押さえながらひょいとももぽんが彼のもう一方の手の中を覗き込む。

「マーティン、なにメモってるの?」

内緒話をするように、星崎さんが補足してくれる。

「バラは西洋では愛の象徴だからね」

 えーっ、うっそーと盛り上がるももぽんたちの声を聴いていられなくて、あたしは花束に顔を伏せた。バラの香りを嗅ぐふりをして。

 もちろん、知ってるわ。

 かみやん。

 ありがとう。

 それから。

 大好き。

 あたしは、自分の手で紡ぎだした物語の結末を、力いっぱいに抱きしめた。

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