第335話 巨乳差別しないでくれます?
そして迎えた16日土曜日。討論番組当日。
スタジオの右手には、ベリーショートヘアでノーメイクの女性たちが座っていた。
歳は、アラサーからアラフォーぐらいか。
服装は全員ズボンと運動靴で、スカートやヒールを履いている人は一人もいない。
対するこちらは、亜麻色の髪と蜂蜜色の瞳が美しい桐葉と、銀髪翡翠眼が魅力的な糸恋と、黒髪縦ロールが印象的な美方とその弟、守方の四人だ。
他のメンバーは、周辺に控えている。
もちろん、こっちは全員新制服姿だ。
「待ちなさい、事前情報ではそちらは3人と聞いていたんだけど?」
「この子はワタクシのオプションですわ」
「どうも。姉さんの弟で生徒会書記の守方です。僕は討論に参加しないのでお気遣いなく。それにそちらは10人以上いるんだから問題ないですよね?」
癒し系イケメンスマイルに、女性陣はたじろいだ。
「ま、まぁいいわ。それよりも、どうして彼が不参加なのかしら?」
黒スーツの女性が、じろりと俺を睨んできた。
「ハニーは生徒会メンバーはありませんわよ?」
「だとしてもPVを主導したのはあの男なのでしょう?」
「あ、ウチの発案です」
糸恋が軽く手を挙げると、女性陣は動揺した。
「待って? 女の子たちが主導したの?」
「話が違うじゃない」
「だってまさか女子があんなPV作ると思わないし」
「みんな落ち着いて。相手が女子でも私たちのやることは変わらないわ」
「そうよ。ああいう名誉男子が私たち女性の品格を下げるんだから」
「わかったわ」
謎の円陣を解散させ、今度はトンガリメガネの女性が居丈高に口を開いた。
「貴女が発案者ね。神聖なる学び舎のPVであんな汚らわしい映像を公開するだなんて、貴女方生徒会は何を考えているのかしら!?」
「何って、胸の大きな子でも楽に着られる制服ですよって伝えようと考えてたなぁ」
はんなりと答える糸恋に、トンガリメガネはボルテージを上げた。
「嘘を言いなさい! あんなハレンチ極まりない下品な映像を流して親御さんに申し訳ないと思わないの!? 若い娘がこれみよがしに胸を見せびらかして、私が親なら涙が止まらないわ!」
「ウチの両親はPVに出てるん喜んでくれとるし、親でもない人に親だったらって架空の話されても困るわぁ」
「屁理屈を言うんじゃありません! なんて可愛げのない! これだから最近の若い子は!」
桐葉が鼻で笑った。
「自分の間違いを指摘されたら可愛げないって、おばさん謝罪もできないの?」
「おばさんとはなんですか失礼な!?」
「え? おばあさんだったの?」
「ギィイイイイイイイイイイイイイ!」
「ふっ、賢いワタクシは知っていますわよ桐葉さん。【初老】という単語の意味は40歳以上の人間。つまり、40歳未満はおばあさんではないのですわ!」
「わぁ、ねぇさんかしこーい」
守方がやさしい拍手を送ると、美方はドヤ顔でふんぞり返った。
そしてトンガリメガネは口角を凍り付かせながらガクガクと震え始めた。
俺の隣で、真理愛がトンガリメガネの個人情報を念写して見せてくれた。
40歳だった。
「問題はそこではありません!」
黒スーツにネクタイをしめた女性が、キリッと口を挟んできた。
「今の時代は【男女平等】【男女同権】。あのように胸を性的に強調した映像は女性差別を助長させる悪しき存在なのです!」
黒スーツが熱弁を振るうと、発案者である糸恋は首を傾げた。
「へ? けど、どんな胸のサイズにもフィットした制服を支給しますってPVやし、胸元を強調するのは当然やないの? ブラのカタログで胸元が良く見えるようにするのと同じやんか?」
ド正論である。
「女性誌ではなく誰でも見られるネットに公開するのがおかしいのです!」
「市販の下着もネットで見られますえ」
「っ、それは……」
糸恋の言う通りだ。
誰でも通販サイトで下着を検索すれば下着姿の女性を見られる。
黒スーツがうろたえる一方で、糸恋は平静に丁寧に答えた。
「体のサイズはひとりひとり違います。ウチはどんな体型の人でも安心ですよって伝えたかったんです」
「む、胸の大きな人なんてごく一部です! そんな少数派の人用にわざわざ制服を用意する必要があるんですか!?」
「麻弥はーん」
「はいなのです」
俺の隣に座る美稲の膝から飛び降りた麻弥たんがチョコチョコとカメラの前に出て、一枚のMR画面を出した。
「これが超能力者のおっぱいグラフなのです」
日本人女性の平均バストサイズ
常人 A10% B36% C34% D10% E 5% F以上5%
超能力者 A 5% B15% C15% D20% E20% F以上25%
相手女性陣が一斉に噴いた。
「グラビア業界ではEカップ以上を巨乳と呼ぶらしいので、超能力者は全体の45パーセント、半分近くが巨乳なのです」
と、何故か自慢げに平らな胸を突き出す麻弥たん。かわいい。
「だからと言ってあんな乳袋、じゃなくて、胸にフィットさせる必要はないでしょう!」
糸恋の表情が変わった。
「巨乳差別せんといてくれます!? 巨乳は大変なんやで! ただでさえ谷間と下乳に汗がたまるし揺れて動くのに邪魔やしブラのサイズないし、カップ付きインナーは重さに耐えきれず崩壊するし、なのに着る服まで乳カーテンでウエスト太く見えるしウエストをスカートの中にしまったらピーンて布が張って乳テントになるし、シャツのボタンが閉まらへんし、胸基準で大きいサイズ買うたら袖の長さや丈が合わへんし、Tシャツの胸の柄は歪む! ウエストは細いけど胸元は余裕のある服がどれだけの巨乳女子を救うと思っているんや!」
——糸恋、おっぱいで苦労してきたんだなぁ……。
突然の剣幕に圧され、黒スーツはたじろいだ。
「ていうかボク思うんだけど、なんでSSサイズからLLサイズまで身長や太り具合に対応したサイズは作っていいのに胸のサイズに合わせた制服は作っちゃいけないの?」
「え? それは……」
「ふっ、どうやらぐうの音も出ないようですわね。このワタクシを説き伏せようなど100年早いですわよ! オーホッホッホッ」
「流石は姉さん、何もしていないのに凄い自信だね」
「ん? それはどういう意味ですの?」
「戦場の自軍本陣でどっしりと構えている総大将の風格っていう意味だよ」
「なるほどそういう意味ですの。流石はワタクシの弟。よくわかっていますわね♪」
——美方が生徒会長でいいのだろうか?
一抹どころか十抹の不安が頭をよぎった。
「論点がズレているぞクソガキがぁ!」
割って入ったのは五十代、アラフィフぐらいの荒っぽいオバサンだった。
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3月8日にギフトを頂きました。二年にわたり、毎月ギフトを送っていただきありがとうございます。
3月も一週間未満更新で頑張っております。
次回更新予定は
3月15日 第336話 賢者タイムってどういう意味ですか?
3月21日 第337話 バーサーカーに論破は通じない?
3月27日 第338話 このあとどちゃくそマーキングされた
4月●●日 第339話 糸恋って俺のこと好きなんだろうな
です。
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本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。
みなさんのおかげで
フォロワー25673人 1343万4050PV♥193188 ★10317
達成です。重ねてありがとうございます。
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