第268話 完全KO!




 まさに全滅、死屍累々だった。


 そして、追い詰められた人間のさがというか、とうとう禁忌に手を出した。


「黙れ! 念写能力で対抗馬を冤罪で刑務所送りにする独裁者め!」

「証拠動画があるから冤罪ではないぞ?」

「あがぁっ!」


「だとしても何故わざわざ対抗馬を逮捕させるのだ!」

「捜査したら犯罪をしていたから捕まえただけだ。対抗馬かどうかは無関係だ」

「いぎぃっ!」


「このタイミングでやるのは明らかに自身の当選を有利にするためだろ!」

「犯罪者が当選しないようにだ。自分の利益に繋がるから野放しは理屈に合わん」

「うぐぅっ!」


「ならあのパワハラ動画はなんですか! ただのイメージダウン戦略でしょう!」

「暴行罪傷害罪侮辱罪名誉棄損罪を知らないのか?」

「えげぇっ!」


「おごぉっ!」

 と、俺の隣で詩冴が声を上げた。


「今のはなんの悲鳴だ?」

「ア行をコンプリートしようと思いまして♪」


 やりきった顔の詩冴がちょっと可愛かった。


 一報で、スタジオでは四人ともバツの悪い顔でうつむき、身を縮めている。


 そうした有象無象共は捨て置いて、早百合さんはカメラに向かって告げた。


「それと、国会議員の給料などは【国会議員の歳費、旅費、及び手当等に関する法律】で定められている。この法律を可決させたのも国会議員だ。だから約束しよう。青桜党が与党になった暁には、この法律を改正し、我が政党の議員は全員賛成に票を入れよう。もっとも、論理的に間違っている法律なのだから、良識と常識があれば野党議員でも賛成に入れる筈だがな」


 爽やかなイケメンスマイルで、歯を光らせた。


 動画コメントには、「キャーイケメーン」「ステキー」「だいてー」という書き込みが殺到している。


 早百合さんのカリスマ性半端ねぇ……。


 こうして、対談番組は大成功を収めた。



 番組の中では、どの政党がいいとか悪いとかは言わない。


 でも、視聴者にはどの政党が政権を取るべきか、一目瞭然だろう。


 早百合さんは凄い。


 日本経済再生は俺ら超能力者のお陰、という人がいるけど、発起人は早百合さんだ。


 前に、美稲が言っていた。


 インタビューで利用されているだけではないかと聞かれた時、自分が黄金を生成しても質屋や換金所で換金するのがせいぜいだと。


 俺も美稲も詩冴も、みんなそうだ。


 みんな、異能省のバックアップ、後ろ盾があるから大活躍できている。


 個人レベルなら、ちょっと生活が便利になるライフハック程度の使い道しかないだろう。



 収録が終わると、四人の候補者たちは、肩を落として帰っていく。


 早百合さんも桐葉と美稲を引きつれ、俺の方に向かって歩いてくる。


 三人とも、満足げな面持ちだ。


「みんなお疲れ様。ほい飲み物、おっと」


 俺は三人分の200ミリリットルペットボトルを手に踏み出すも、足がもつれて転んでしまった。


 すると、武の達人を思わせる俊敏性と柔軟性を併せ持ったムーブで、早百合さんは俺を抱き留めてくれた。


 左腕一本で俺を受け止めながら、右手の指には三本のペットボトルをつかんでいる。


 俺を助けながらの神業だった。


「あ、ありがとうございます」


 お礼を言いながら顔を上げると、早百合さんが俺の100倍、守方の10倍イケメンの王子様スマイルを見せてくれた。


「危ないぞ奥井ハニー育雄。もはや貴君一人のカラダではないのだ。もっと自分を大切にしてくれ」

「は、はい!」


 一方で、俺は女の子みたいな口調で返事をするのが精一杯だった。


 お腹の底がキュンとしてしまったのは内緒だ。


「ハニーってヒロイン属性だよね」

「私も最近はそう思い始めているよ」

「ちょっ、美稲まで! 俺はバトル漫画なら最強系主人公なんだろ!?」


 かつては俺のことをそう称してくれた美稲だが、今は桐葉と一緒に怪しげな雰囲気で言葉をかわしあっている。


「ふっ、なんなら控室までお姫様抱っこで運ぼうか?」

「これ以上俺の威厳を下げないでください!」


 俺の悲鳴に、みんなが笑っていた。



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★話が分からなくなって読むの辞めるという人が出ないようにあらすじ

112話~154話 読み飛ばし可

 夏休みに突入したハニーたちはみんなで沖縄旅行へ。そこでポロリエロハプを繰り広げてから首里城を見に行くと、貴美美方と守方の姉弟と出会う。

 そして、戦闘系能力者が怖がられていることを知る。

 ハニーたちは桐葉のため、夏休み返上で戦闘系能力者のイメージアップ作戦を開始。超能力者同士が戦うバトルスポーツ、アビリティリーグを発足させる。

 反対派はいつものように論破して大勝利。

 美稲のリビルディングでダイヤモンド半導体を作り6G社会を実現することで日本中の人が五感情報全てを使い観戦できるようインフラを整え、ついに興行を開始。

 だが、無能総理の暴走で目玉試合である桐葉VS美稲の開始が遅れてしまう。

 そこへ現れた美方と守方に救援を求めると、二人の超常バトルに観客は大喜び。二人のおかげでアビリティリーグは大成功を収める。

 だが、試合終了後、超能力者への反対はがOUのパワードスーツに乗って乱入。

 絶体絶命のピンチだが、ハニーの新必殺技、ゲートによるカメハ●波で敵を撃破。

 悪と戦う姿が全国に流れることで見事、戦闘系能力者のイメージアップに成功したのだった。

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 1月19日に新規の方からギフトを頂きました。

 本作、スクール下克上を楽しんで頂けているようで嬉しい限りです。

 本作がより面白くなるよう、期待に応えられるよう頑張ります。

 次回更新予定は

 1月31日 第269話 久しぶりの全裸系エロハプ 王道だよね  です。

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 本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。みなさんのおかげで

 フォロワー21795人 952万1881PV ♥143947 ★8821

 達成です。重ねてありがとうございます。

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