第227話 鈍感スキル


 コロナで寝込んでいるので、昼更新になってしまいました。すいません。

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「おや、これはこれは美方さん」


 琴石は演説を止めて、美方に歩みよってきた。


「あれからアビリティリーグのPVを何本も出して調子ええみたいやな」

「ええ、おかげさまで、中間支持率は貴女を越えましたわ」

「越えた言うてもほんの1パーセント。浮動票を入れたらすぐにウチの逆転や」

「なんですってぇ!」


 互いにツノを突き合わせるように至近距離で睨み合い、火花を散らせる二人。


 その下では琴石の豊乳と美方の巨乳が互いに押し潰し合い、男子たちと詩冴が色めき立っている。


「これは眼福、しかし悲しいことに物量差ではミカタちゃんに勝ち目はないっすッ」

「お前はどこを比べているんだよ?」


 俺は軽くツッコみつつ、気持ちは分かる。


 美方は美人でスタイルも良く、黒髪ロールの髪型も相まっていかにもお嬢様として派手な容姿をしている。


 一方で、琴石は桐葉並の長身に豊満なバストとヒップに長い銀髪とエメラルド色の瞳という、ボリューミーかつインパクトのある容姿をしている。


 ぱっと見の迫力、威厳のようなものは、琴石に軍配が上がるだろう。

 

 ――悲しいけど、選挙に外見は大事なんだよなぁ。


 かのアメリカ大統領リンカーンは、ヒゲを生やして威厳をつけた途端に支持率が上がり大統領選に勝利した、という話はあまりにも有名だ。


 人間は視覚を発達させた生き物で、視覚情報から相手の印象を決める。

 印象は好感度を決め、好感度は評価を決める指標になる。


 美方だって、生徒会長としての能力とは何も関係がない、アビリティリーグの映像という資格情報で【カッコイイ】という印象を広めて、支持率を伸ばしている。


「まぁええわ。確かに、アビリティリーグの選手としてはあんさんのが一枚も二枚も上手かもしれへん。けどな、生徒会長としてはウチのほうが優秀やと証明したるわ」


 調子よく、朗々と舌を回してくる琴石に、美方は顔色が悪くなる。


「ふ、ふんっ、負け惜しみかしら? 下品なカラダで男を釣って男性票を得るしか能がない淫獣のくせに」

「おやおやひがみかいな? ごめんなぁHカップでぇ、ごめんなぁ、ウエスト58なのにヒップ90越えでぇ」


 長身から重圧をかけるように見下ろしてくる琴石に、美方はたじたじだった。


「ぐぐっ、ナメるんじゃありませんわ。ワタクシのことは四天王である美稲たちが支持していますのよっ」

「はいまけー。虎の威を借りる狐とはまさにこのこと、自分に自信がないからって後援者の名前を出すなんて二流もいいところやわ」


 琴石が有頂天になる一方で、美方は歯を食いしばり、負け惜しみすら出せないようだった。


「とはいえ、偉人のお墨付きをもろてはるのは評価に値しますわな。詩冴は日本の食料肉問題を解決、真理愛は芸能界の健全化を実現、美稲は地下資源問題を解決、ハニーは一人でエネルギー問題を解決する世界で唯一のテレポーターやし」


 それに、と挟んで、琴石は頬を染めた。


「ごっつイケメンやし優しいし何人もの女人をとりこにする色男だけどそれを鼻にかけない謙虚なお人で、体育祭の時に事故でウチの乳を揉んだ時も嫌悪感を感じさせない優しい手つきで、あれはウチが悪いのに謝ってくれる克己心と気遣い溢れるお方で」


 内股をもじもじさせながら両手を頬に当て、琴石はリンゴかってくらい赤くした顔で俺の顔色をうかがってくる。


「それに桐葉の恋人やからつまり毒蟲の能力でも気にしない度量と乳がデカ過ぎても受け入れてくれる器の大きな殿方で今後どれだけ成長しても安心やし、中学の頃にスレンダーな娘が好きやとフラれたウチのトラウマを払拭してくれた素敵な素敵なハニーに支持されて羨ましいかぎりやんなぁ……」


 指と指の間から俺のことを見つめてくる琴石の周りに、女子たちが群がった。


「え、もしかして琴石さんてばそうなの?」

「あっちで詳しい話聞かせてぇ!」

「あたし琴石さんのこと応援しちゃう!」


 思春期真っ盛りの女子たちは琴石を拉致して、校舎裏に移動。

 後に残された美方は、戦う相手を失い、鼻白んだ。


「ふんっ、くだらない。さぁ、とっとと教室へ行きますわ、よ? あら?」

「守方ならもう教室に行ったぞ」

「なっ!? あの姉不孝者! 待ちなさい守方ぁ!」


 ばたばたと玄関に向かって走る去る美方の背中を見送りながら、俺は辟易とした。


「なんか、どっちが生徒会長になっても不安しかねぇなぁ……」

「それよりもハニー君、またお嫁さん、増えちゃうんじゃない? 琴石さんの部屋なら余っているよ?」


 指先で肩を突っついてくる美稲に、俺は苦笑いを浮かべた。


「おいおい、美稲までやめてくれよ。琴石はただ俺を褒めただけで好きなわけじゃないだろ? そうやってなんでもかんでも恋愛に結び付けるのは良くないぞ」


 俺の返事に、美稲を含めて女性陣全員の視線が白くなった。


 ――ん? どうしたんだみんだ?


 わけがわからず、俺は首を傾げた。


 天の声:主人公は【214話】の美方のせいで一時的に鈍感スキルが発動しています。以後は発動しません。


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コロナで寝込んでいる関係で更新が朝ではなく昼になってすいません。

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 本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。

 みなさんのおかげで

 フォロワー18122人 660万0935PV 100706♥ 7546★

 達成です。重ねてありがとうございます。

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