第202話 10種類の揉み方をすれば10種類の幸せがある

 学園祭の二日後。

 10月9日の火曜日の朝。


 ベッドで眠る俺は、まどろみの中で何かとても素晴らしい幸せを手につかんだ。


 大きい。


 その幸せは到底、手の平には収まらず、指と指の間から溢れるほどやわらかいのに、同時に確かな力で押し返してくる弾力も持っている。


 肌触りはなめらかなのに、まるで手の型でも取るように、みっちりと余すところなく吸い付いてくる。


 やわらかくも反発力がある。

 滑りつつも吸い付いてくる。

 相反する魅力のわがままセットは、揉めば揉むほど幸せが大きくなっていく。

 俺は、もう夢中で幸せを堪能し続けた。

 幸せのかたまりを揉みしだいて、こねくりまわして、もてあそぶ。


 かたまりは、もみかたを変えれば幸せな感触も変わった。


 10種類の揉み方をすれば10種類の、20種類の揉み方をすれば20種類の幸せな感触を提供してくれた。


 どれだけ掘り進んでも、幸せの鉱脈が尽きない。

 俺は快楽欲と好奇心のまま、欲望のままにかたまりを味わい尽くす。


 そうすると、ちょっとした違和感に気づいた。


 手の平に、ぷにっとした突起がある。

 それも、さっきよりもツンと自己主張している。


 これはなんだろうと指先でつまんでみた。

 くにくにともんで、くりくりとねじってみた。

 すると、かたまりがぴくん、ぴくんとふるえた気がする。


 こちらの行動にあわせて反応してくれるのが楽しくて、色々試してみた。


 まどろみの中なのに、俺の類まれなるクリエイティビティはいつになく発揮され、五指と手首を千変万化させた。


 動きを激しくさせていくと、かたまりの隣に、もうひとつ別のかたまりを発見した。


 俺は迷うことなく、左手を伸ばして、もうひとつのしあわせをこの手につかんだ。


 ひとつでも両手にあまるソレを、片手にひとつずつと贅沢極まりない欲張りセットで楽しむ。


「ぁッ……ッッ……ゥン……ンクッ……も……ダ……ァッ、イッッッ~~~~~~~~ッはぁぁぁ~~…………」


 なんだか、とても艶めかしい声が漏れ聞こえた。


 あまりにえっちな声に、邪心がうずいてきた。


 ――ぐっ、いま桐葉と会ったら、良くない行動に及んでしまうかもしれない。桐葉をはずかしめる前に、賢者に戻らねば。


 俺は狂戦士から賢者へジョブチェンジすべく目を開けた。


 すると、汗だくで頬を火照らせ、充足感溢れる表情で両目をトロンとさせた桐葉と目が合った。


「はぁ、はぁ……」ごくん「ありがとうハニー、一生の思い出にするよ……えへへ」


 俺が両手を握ると、桐葉は目をつぶって甘い嬌声をあげた。

 俺の両手は、桐葉のおっぱいを直揉みしていた。


「ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ~~~~~~~~!!!!!!」


 まどろみの中で自分のしてきたことを思い出して、絶望感と罪悪感が毎秒倍々ゲーム式に増えて俺の心臓を押し潰した。


 なにものにも拘束されることのない桐葉のおっぱいは、いつも以上に大きく感じる。


「くぁwせdrftgyふじこlp」


 五十音表記できない悲鳴を上げながら、俺は両手を桐葉から離した。


「きききき、桐葉さんなんでここにいるですますか!?」


 ようやく絞り出した人間語は、ぶざまの一言に尽きた。


「ふふ、昨日、詩冴がお嫁さんグループに加入したからね。一度本妻の存在感を示しておこうと思って」


 両脚を俺の脚にからませ、桐葉は俺を仰向けに転がしながら俺の下腹部にまたがってきた。


 ちょうど、彼女にマウントポジションを取られる形だ。

 格闘技に置いてこの態勢は死を意味する。

 つまり、もう俺は煮るなり焼くなり桐葉の思うがままというわけだ。


 俺から抵抗手段を奪った桐葉は、両手で俺の両腕を抑え込みながら、ゆっくりと上半身を倒してきた。


 桐葉のパジャマは前のボタンが全部はずれて、胸の谷間が丸見えだ。

 でも、俺の視線は胸ではなく、迫る瞳に釘付けだった。


「ねぇハニー、今度は録画するから、さっきのもう一度して」


 甘い声音で囁いてくるくちびるに、俺は二度も三度も胸を高鳴らせた。


「な、何故でせうか?」

「将来、もしもボクらがケンカしちゃったら、ソレを見て仲直りするの。いいと思わない?」

「素敵すぎる提案をするな! 逆らえないだろ!」


 体どころか口まで正直な俺に、桐葉は瞳をキュンキュンさせていた。


「えへへ、大丈夫だよハニー、今度はボクもちゃんと協力するから」


 ――どんな風にぃいいいいいい!?


 心の中で絶叫しながら、俺は今日、星になる覚悟を固めた。

 刹那、部屋のドアがブチ開けられた。






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ニワトリが飛べないのは才能でも努力でもなく環境のせいだ! 無能な少年と師匠の出会いが、一人の英雄を誕生させる──。


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 本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。

 みなさんのおかげで

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 達成です。重ねてありがとうございます。

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