第180話 学園祭当日!メイド姿お披露目!
10月7日の日曜日。
すっかりと残暑も抜け、過ごしやすい気温に秋の訪れを感じる今日は学園祭当日だ。
来場予定者数はおよそ3000人。
異能学園がマンモス校と言えど、人でごったがえすだろう。
教室に布いた絨毯の上を、詩冴が教室から出ないよう指示した猫たちが平和そうに寝転がる教室で、執事服姿の俺はため息を漏らした。
「どうしたのハニーくん?」
俺のことを心配してくれるのは、貴美姉弟の弟さん、守方だ。
執事服がこれ以上ないくらい似合っている。
相変わらず、少女漫画に出てきそうなイケメンで、だけど眠そうな目が人畜無害感を出しているから、嫌味には感じない。
「ん、ああ。出動要請が何回かかるか心配なんだよ」
「3000人も来るからね。僕も龍崎次官から聞いた理屈だけど、100人に1人のバカが30人、1000人に1人のバカが3人、3000人に1人のバカが1人は来る計算になるね」
例えばこういうの、と付け加えて、守方はMR画面を展開すると、先日LIVE配信された、元クラスメイトたちの蛮行動画を流した。
「頭が痛くなるようなことを言うなよ」
「はは、ごめんごめん。それにしても、はにーくんがひとりでいると違和感があるね」
「いつもは桐葉が一緒だからな。そういうお前も、一人だと違和感ばりばりだぞ?」
「僕もいつも姉さんに張り付かれているからね」
守方は楽しそうに苦笑した。
「仲いいな」
「本人は認めないけどね。そのくせ、昔から僕が一人で遊びに行こうとすると怒るんだよ。ワタシを置いていくなんて許しませんわ、とか言って」
「うわぁ……言いそう」
「いい加減弟離れして欲しいんだけど、というわけで飼い主役はバトンタッチ」
言って、俺の手をぺしんと叩いてくる。
「いやいやまだ甘えさせてあげろよ」
言って、俺は守方の手をぺしんと叩き返した。
「返品されちゃった」
守方が楽し気に失笑を漏らすと、廊下が騒がしくなってきた。
ざわめきは徐々に俺らの教室に近づき、そして、ドアが開いた。
「おまたせハニー、セクシー甘ロリメイドの登場だよ?」
露出度は少ないのに、メイド服に納まりきらないボディラインでセクシーさを主張しながらウィンクを飛ばしてくる桐葉の姿に、俺はまばたきを忘れた。
撮影スタジオで何度も見ているのに、まるで初めて目にするような新鮮味があった。
桐葉のうしろに続いて、美稲、詩冴、真理愛、麻弥、舞恋、茉美、美方、他の女子たちが、次々教室に入ってきた。
甘ロリ美少女メイドたちの登場に、男子たちは色めき立った。
「うわぁ! F6が全員倒れたぞ!」
「マジかこいつら! おいしっかりしろ!」
「今日のためにレーシック手術を受けたんだろ!?」
――気合い入り過ぎだろ!
「ねぇねぇハニー♪」
桐葉がいろいろとポージングを作るので、俺はF6を保健室にテレポートさせて忘れた。
あとは、保健室の先生に任せておけばいい。
それよりもいまは桐葉を堪能したい。
「す、すごく可愛いぞ。ドキドキする」
「えへへ。嬉しい」
その笑顔に悩殺された。
彼女が転校してきたときに思ったことだ。
桐葉は、可愛く見せるためのアクセサリーも衣装もヘアセットも化粧も、笑顔すらなくてもなお美しい、真正の美少女だ。
だから、彼女が甘ロリメイド衣装に身を包み満面の笑みを見せると、琴線に触れるどころかわしづかまれるぐらい魅力的だった。
さっきから、心臓がギュンギュンして、首から顔にかけて肌が熱くて、足元がふわふわする。
床が頼りない。
――どうしよう。桐葉が美人過ぎて、恋と性欲の区別がつかなくなりそうだ。
だからこそ、俺は彼女と肉体関係をもたないのかもしれない。
それが、俺が彼女の内面を愛している証拠になる気がして。
「ハニーさん、私のメイド姿はハニーさんのご期待に応えられているでしょうか?」
「似合い過ぎだろ」
完全に歩くフランスドールだった。
再現度400パーセントだ。
女子たちですら、真理愛の美貌と頭身の高さに唖然としている。
続いて、茉美が目を吊り上げながら俺の視界に入ってきた。
気の強そうな女の子が頑張って従順そうな甘ロリメイド服を着ると、信じられないぐらい可愛かった。
茉美が堂々とはせず、恥ずかしさに耐え忍ぶ表情で固まっているのが、余計に可愛い。もう可愛い以外の感想が浮かばなかった。
だけど。
「何も言わないで!」
突き出した手で俺の口を抑えながら、眉をきりっとさせる茉美。
「わかっているわよ。あたしは桐葉や真理愛みたいに美人じゃないし、桐葉より胸小さいし真理愛みたいに清楚でもないし、下位互換とか思っているんでしょ?」
語気を強めながら、茉美は一気にまくしたてた。
「だからあたしのメイド姿には感想とかいいから。いらないから。フォローやお世辞はみじめになるだけだからッ」
無言で彼女の後頭部をぽんぽんした。
顔を倍も赤くして、茉美は息を止めた。
いつも俺の頭を遠慮なくわしゃわしゃしてくる茉美は今、メイドカチューシャをしている。
それに、ヘアセットが乱れるから、髪に触られたくない女の子もいるだろう。
だから、頭のてっぺんではなく、彼女の後頭部を手で優しくなでた。
これなら、何も言わなくても俺の気持ちが伝わるだろう。
「ッッッ!」
茉美はサイドテールを振り乱しながら握り拳を振りかぶるも、そこで歯を食いしばり、ぷるぷると震えてから、気が抜けたように美稲に抱き着いた。
「あらあら、ハニー君てほんと愛されているよね。モテモテ?」
幼子をあやす母親のように、茉美の背中をぽんぽんと叩く美稲。
桐葉や真理愛と並んで、美稲もかなりの美少女なので、驚くぐらい似合っている。
しばらく眺めていたいけど、彼女がいるのにそれはいけない気がする。
だから麻弥を眺めておくことにした。
「麻弥が一番かわいいなぁ」
「えへんなのです」
「差別っす!」
一言も触れられなかった詩冴が抗議した。
自分よりも胸の大きい桐葉の隣に立つことで、対比で自分の胸を小さく見せようとする舞恋は、詩冴の抗議に苦笑いを浮かべていた。
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本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。
みなさんのおかげで
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達成です。重ねてありがとうございます。
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