第82話 放送事故
●あらすじ5 35話~42話
桐葉と美稲の心を救い、他のヒロインたちとも仲良くなり、みんなで楽しく水族館デートをした育雄。
解散後、美稲は自分の人生が変わったことに幸せを噛みしめる。
しかし、そこへ忍び寄る魔の手が。
幼い頃から育雄をイジメ、さらには美稲に片思いしていたアイスキネシストの坂東亮悟が現れ、美稲に迫る。
物質を分解し、再構築する能力者で戦闘には自信のあった美稲は迎え撃とうとするが、相性の問題で能力を封じられてしまう。
だが、坂東の凶行が美稲に迫った時、育雄がテレポートで助けに現れる。
坂東は全身を氷で覆った最終形態だが、育雄は必殺の自販機落としで坂東を打ち倒す。
後日、超能力者だけの異能学園が建造され、そこへ転校することに。
育雄は前の学園を捨て、ヒロインたちと新たな青春へと踏み出した。
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翌日の金曜日。
教室は、芸能界全体の話題で持ちきりだった。
理由はもちろん、真理愛のせいである。
昨日の放課後から夜まで、真理愛は100人を超える芸能人や監督、プロデューサーのスキャンダル動画をネット上に念写し続けた。
枕営業、不倫、賄賂、暴力、性犯罪などの問題で芸能界は逮捕者が続出している。
メディアは話題に事欠かず、大盛り上がりだ。
ネットは阿鼻叫喚の地獄絵図とお祭りの二重奏で、中には何故か真理愛を恨む書き込みがあり、理不尽に思った。
世間と教室の白熱振りに、俺は頭を悩ませてしまう。
――人の不幸で騒ぐのは良くないけど、自業自得なんだよなぁ。あと何故真理愛が恨まれる?
「ていうか、今更だけどこれって法律的には問題ないのか?」
俺が席に座りながら真理愛に問いかけると、彼女はこくんと頷いた。
「昨日、警察署の方々に確認を取りました。2020年代は犯罪の証拠や迷惑行為の動画をサイトに投稿するのは名誉棄損に当たるかどうか議論があったそうです。ですが、2030年に、治安維持と犯罪の抑止力として、犯罪の現場の撮影と投稿は盗撮や名誉棄損に当たらないという最高裁判所での判決が下ったそうです」
真理愛の説明を補足するように、伊集院が口を挟んできた。
「ていうか、元から犯罪はテレビで報道されて全国に晒されるものだしね。犯罪の事実を内々に処理していたらただの隠蔽体質。それこそ犯罪の温床だよ。僕は有馬さんのやっていることは素晴らしいと思うよ」
と、真理愛にキメ顔を作る伊集院。
だが、真理愛は桐葉と一緒に麻弥の頬をぷにっていた。
麻弥は桐葉の膝の上で桐葉のおっぱいを枕にして、実に気持ちよさそうだ。
肩透かしを食らった伊集院は、眉をぴくぴくと痙攣させていた。
――お前もう諦めろよ。ていうか桐葉と真理愛が並ぶと絵になるな。いつまでも眺めていたい。
俺が胸をほっこりさせていると、詩冴が飛びついてきた。
「ハニーちゃんハニーちゃんハニーちゃん! ハニハニハニーちゃん!」
「なんか、ハニワのゆるキャラになった気分だなおい。で、どうした?」
人の仇名を連呼してくる詩冴とは対照的に、俺は冷めた態度で接するも、詩冴は慌てた様子でまくしたててきた。
「今日の放課後シサエたち四天王+マリアちゃんにテレビ取材の打診ありましたよね? あれって受けなきゃダメっすか!?」
「お前まだビビっているのかよ? 昨日、決めただろ? 俺らが国連に管理されないよう、知名度を上げようって」
昨日の仕事終わり、早百合局長の話ではOUが国連に異能者管理局を作るよう働きかけているらしい。
テレビ局の取材を受けるのは、その対策のひとつだ。
「俺らが国民的ヒーローになったら世論を味方につけて、野党政治家たちも俺らを国連送りにしようとはしないだろ?」
「う~、でもでも、何百万人ていう人がシサエの姿を見るんすよ? シサエはどんなパフォーマンスを発揮すればいいんすかぁ!?」
「お前かまってちゃんのくせに注目されるの苦手なのな……」
――そういえば、前も取材を受けたときにガチガチだったな。(第31話参照)
「じゃあ前みたいにお前への質問はパートナーである俺が答えとくから。お前はクールキャラ演じとけ」
「そ、そこはパートナーじゃなくてカップルでもいいっすよ、ぽっ」
「急にモジモジするなよ」
ちなみに伊集院は、
「針霧さんも出演したほうがいいんじゃないかな? 奥井の【彼女】として」
「テレビに出るまでもなくボクはハニーの恋人だよ」
と、桐葉に冷たく切り捨てられていた。
真理愛は俺に恋しているわけじゃないんだから、俺と桐葉を公認カップルにしてもお前が真理愛の恋人になれるわけじゃないぞ?
なんだか、伊集院が残念イケメンに見えてきた。
◆
放課後。
超能力者のメンバーを仕事現場にテレポートさせた後。
俺はボディガードの桐葉、それから同じユニークホルダーの美稲、詩冴、伊集院、そして真理愛と一緒に、テレビ局のスタジオを訪れていた。
俺ら五人はカメラから見て左側の椅子に座り、右側の席にはゲストである芸人が座っている。
MCの男性は俺と芸人たちの真ん中に立ち、番組の進行を務めている。
「いやぁ、予知能力は本当にすごいですねぇ」
「はい。犯罪は未然に防ぐ、それが理想ですから。警察班の最強コンビとして、これからも有馬さんと二人で日本の平和を守っていく所存です」
キラリン、と効果音が聞こえてきそうなキメ顔で伊集院が真理愛に流し目を送った。すると真理愛は視線だけを3ミリずらして一言。
「いえ。私は警察署では舞恋さんと麻弥さんとトリオを組んでいますので、伊集院さんとコンビを組んだことはありませんよ?」
「あ、いや、ツートップって意味でね、ね?」
「?」
表情筋を1ミリも動かさず、真理愛は疑問符の波動を頭上に放った。相変わらず器用な子だ。
真理愛のポンコツぶりには、さしものイケメン王子もたじたじだ。
「えーっと、ちなみに有馬さん、その舞恋さんと麻弥さんっていうのはどういう人なんですか?」
「はい。麻弥さんは小柄で可愛くてツーサイドアップの房が可愛くて声が可愛くてほっぺがぷにぷにの可愛い子で、舞恋さんは栗毛のワンサイドアップが印象的で、私よりも小柄ですが私と違って胸は大変大きく、ですがそのことを気にしていていつも胸を小さくみせようとしているところが愛らしい人です。あ、お尻も大きいです」
――真理愛さぁああああああああああああああん!?
今、きっとカメラの向こうで舞恋が恥ずか死している姿を想像しながら、理由なき罪悪感が湧いてきた。
「いやいや、私と違ってって、有馬さんもスタイルいいじゃない?」
「いえ、私ごときが畏れ多いことです。私など桐葉さんに比べれば、あ、桐葉さんというのは育雄さんのボディガードで亜麻色の髪と蜂蜜色の瞳が印象的な美少女で、メロンを横に二つ並べたようなお胸の――」
「うん! この話はいったん置こうか!」
真理愛の言葉を遮って、MCの人は放送事故を防いだ。うちの子がポンコツでごめんなさい。
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本作、【スクール下克上 ボッチが政府に呼び出されたらリア充になりました】を読んでくれてありがとうございます。
みなさんのおかげで
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達成です。重ねてありがとうございます。
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