第21話綺麗なオネエさんは好きですか?
「いいか?出来るだけ顔は出すな。お前の可愛さが分かってしまうからな」
平然と可愛いと宣うジーンに恥ずかしくなってジーンの服に顔を押し付けた。
そうだった。
この人はタラシだった。
気を付けよう。
「ヒヨリ?怖かったか?すまない、でも…」
「違うから安心して。ちょっとジーンの今後を憂いていただけだから」
「俺の?」
「女性に刺されそうだなってちょっと思って」
「毒は貰ったな。ヒヨリが助けてくれたが」
「え!?」
既に遅かったか。
「ジーン、あんまり人に可愛いとか綺麗とか言わない方がいいよ?皆勘違いしちゃうからね?」
「いや、まず人とあまり話さないからそういったことは殆ど言わないな」
マジで?
でもわたしにはよく言ってるし。
「毒はまぁ、俺が油断していたせいだしな」
そう自嘲気味に言うジーンを私は短い手でぎゅっと抱き締めた。
「油断とか関係ない!悪いのはジーンに毒を入れた人だよ!もう許せない!!」
「そうか。ありがとう、ヒヨリ」
ジーンはぎゅっと優しく抱き返してくれた。
少し恥ずかしいけど安心するし、ちょっと嬉しい。
私がジーンの服にぎゅっと掴まると、その上からジーンのマントが掛かった。
恐らく私の部分だけ盛り上がって怪しいだろうなぁと思いつつ宿を出た。
ジーンは歩くのに慣れていて、誰にもぶつからずにすいすい歩いていく。
そして、とあるお店の前でぴたりと止まった。
え、ここが目的地?
女の子がいっぱいなファンシーなこのお店が?
ジーンがここに入るの!?
そう思い見上げるが、ジーンは迷わず中に入った。
!!??
驚き過ぎて言葉にならない。
ジーンが入ると、綺麗な中性的な狐の獣族が出て来た。
「あら、ジーンじゃない。どうしたの?」
声はどう考えても男性で、喋り方は女性のこの方は、お兄…いや、オネエさん?
頭を混乱させながら、フードの隙間からじっと見ていたらにっこり笑われた。
どちらにせよ美しい。
美人の笑顔は癒される。
「悪いが奥に行っていいか?」
「あら、珍しいのね」
「俺じゃない。この子だ」
マントの上から労るように少しだけ顔を出して見せるジーンに、ちょっとの嬉しさと緊張が走った。
「あら、大変!!お嬢さん、ワタシと一緒に来てくれるかしら?」
「は、はい!」
ジーンは心配そうにこう言った。
「あんなんだから心配になるかもしれないが怖くない奴だ。…俺が居なくても待てれそうか?」
そうだ。
ジーンはギルドに行かなきゃいけなくて、私はこのお兄…オネエさん(?)と一緒にいなきゃいけない。
でも耳にはツンと尖った耳、そしてお尻にはふっさふさの魅惑の尻尾。
なんて誘われる光景!!
ジーンはそんな私を見ながら、安心したように頭をポンポンと撫でた。
「少しギルドの方で話があるんだ。それまで預かってくれ。ついでにフード付きのマントを見繕ってくれれば助かる」
「お洋服もいいかしら?」
「…手加減はしてくれ」
「はぁい、了解したわ。お嬢さん、ワタシとお留守番してくれるかしら?」
「喜んで!」
「あらあら、嬉しいお返事」
ジーンはどこか複雑そうに行ってくると言ったので、行ってらっしゃいと手を振った。
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