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大河ドラマ展は大規模な撮影セットが公開されていて、自由に見て回れる屋外展示施設だ。
ウキウキしながら見学する私を見守るような形で樹くんは着いてきてくれる。
最後にグッズ販売所があり、私はパンフレットを購入してご満悦だ。
「今回も何かストラップ買うかと思った。」
意外とばかりに樹くんが聞いてくる。
「ストラップは金印持ってるからいいの。毎回買ってたらカバンがじゃらじゃらしちゃうじゃない。樹くんもカバンにじゃらじゃら付けるの嫌でしょ?」
すると樹くんはキョトンとして首を傾げた。
「それって俺とお揃い前提?」
「うん。……え?あれ?違うの?」
樹くんが口元を押さえて黙り込むので、私は焦って何か取り繕うとした。けれど。
「いや、姫乃さんって可愛いね。」
でてきた言葉は予想外で、とたんに恥ずかしくなってしまう。
「もう、すぐからかって。」
「からかってない。本気で言ってるんだよ。」
不満げな私とは対照的に甘く微笑む樹くんは、ずずいと私に歩み寄る。
ふと顎をすくわれて、軽くキスをした。
「い、樹くん!」
慌てて我に返った私は樹くんをポカポカと叩く。
まさかそんな公共の場でキスされるとは思いもよらず、動揺で心臓がバクバクし始めた。
ま、まわりに人、いなかったよね?
キョロキョロと確認するも樹くんは澄ました顔をしていて、自分ばかりが余裕がないようで更に恥ずかしくなった。
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