28

「姫乃さんって見かけによらず庶民的なんだ。」


樹くんが意外そうに言う。


「私は思いきり庶民ですー。なんか回りの人が私に抱くイメージが変なのよ。何でかな?」


本当に、特に猫を被っているわけではないのに、私の見た目なのか態度なのか、よくわからないけど昔から勝手なイメージが一人歩きしていく。そんなんじゃないのに、と否定してもなかなか受け入れられてもらえない。


「ふわふわしててお嬢様みたいだよね。俺も初めて見たときはお嬢様かと思ったし。名前もお嬢様っぽい。だから彼氏ができないのかもね。」


「どういうこと?」


「姫乃さんめちゃくちゃ人気あるんだけど、高嶺の花だから手を出しにくい。」


「ええっ、私そんなんじゃないのに。どうしたらそのイメージ払拭できるんだろう?」


「払拭したら姫乃さん今以上にモテるからやめて。」


「そんな。モテてないから困ってるのに。」


思わず頬が膨らんだ。

モテなさすぎていつの間にかアラサーの私。

それを高嶺の花だからなんて理由、光栄だけどとうてい受け入れられるものではない。


「モテたいの?」


「モテたい!」


樹くんの問いに力いっぱい答えると、樹くんはお腹を抱えて笑い出した。


「ははっ、姫乃さんウケる。」


「あー、もう、またバカにしてるー。」


「してないです。」


「してるよー。」


「ははは、はいはい、すみません。」


私は怒っているのに、樹くんはとても楽しそうに笑った。

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