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「これ、カバンにつけちゃおうかなぁ。」


レプリカなのにキラキラと輝く金印は、なんだかとてもロマンを感じる。それに、ストラップになっているところがニクイ。ちょっと可愛い気がしてきてしまう。


「姫乃さん、趣味渋いよね。ウケる。」


樹くんがクックッと笑った。


「ああ、こういうところがダメなところなのかなぁ?」


「全然、ギャップ萌えするよね。」


「…ギャップ萌え?メモったほうがいい?」


「まさか。俺もカバンにつけよ。」


樹くんは私と同じようにカバンに金印ストラップを付け、掲げてみせる。


「姫乃さんとお揃い。」


「う、うん。」


柔らかくにっこり笑う樹くんに、私はまた心臓がドキドキと脈打つ。

ほらまた。そうやって笑うんだ。

会社では見たことのない、優しい顔。

自然と私も笑っていた。


「常設展は?」


「行きたい。樹くんつまんない?」


「全然。めちゃくちゃ楽しい。」


「ほんと?よかった。」


私はほっと胸を撫で下ろす。

行きたいところはと聞かれて“博物館”と答えたはいいが、自分の趣味に完全に付き合わせる形になることに気付き、実は後で後悔していたのだ。

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