19

餃子を口に含んだ瞬間、大野くんが不適に笑った。


「大手企業のエリート彼氏がいるって?」


「ぐっ!」


喉に詰まりそうになり、私は慌ててお茶を飲む。それでも大野くんは攻撃の手を緩めない。


「同棲を初めて結婚も秒読みなんだ?」


「ううっ。」


私は両手で頬を覆った。

大野くんにはすべてお見通しのようだ。


「アラサーなのに彼氏なしだよ。悪かったわねっ。」


「別にいいんじゃないですか?いつも恋人がいなきゃいけないわけじゃないし、いなくて死ぬわけでもなし。」


「でも私もういい年だし、いい加減彼氏作らないと行き遅れちゃうよ。」


いや、本当に。

アラサー独身彼氏なし。

すでに行き遅れ感が半端ない。


「じゃあ作ればいいじゃん。」


大野くんはあっけらかんと言う。

それができたら苦労しないのに。


「どうやって?彼氏ってどうやったらできるの?」


「姫乃さんマジで言ってます。今まで誰かと付き合ったことないんですか?」


私はとたんに顔が赤くなった。

彼氏いない歴=年齢の私。

経験も知識もゼロに等しいのだから、大野くんが呆れるのも無理はない。

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