17
別にちゃんと約束したわけじゃない。
だけど一応約束、なんだよね。
私は仕事中、気になって何度も大野くんをチラ見してしまう。当の大野くんはいつも通りクールに仕事をこなしていて、やっぱりあの約束は夢とか冗談とか、そんな感じだったのではないかと思う。
こんなにソワソワしてしまうなんて、私は大野くんと一緒にご飯を食べることを期待しているのだろうか。
確かに昨日は一緒に食べてとても楽しかった。
でもそれは渚ちゃんもいたからで。
大野くんと二人っきりでご飯を食べるだなんて、まるで恋人…。
そこまで考えて私は慌てて頭をブンブンと振る。
何を考えているの、私ったら。
「姫ちゃんどうしたの?」
「な、ななな何でもないです!」
通りすがりの祥子さんに怪訝な顔で覗き込まれ、私は更に頭をブンブンと振った。
落ち着こう、仕事に集中しなくちゃ。
その後、仕事に集中しすぎて、今度は終業時間を越えていることに気付かなかった。
「姫乃さん、何時までやります?」
「え?あっ!もう定時越えてる?!」
大野くんに話しかけられてようやく気付く始末だ。間抜けすぎる…。
ポカンと大野くんを見上げると、大野くんは笑いを堪えている。
「今日は俺の家で。」
「あの…。」
「夕飯。一緒に食べよ。」
「う、うん。」
大野くんと駅で待ち合わせをして、そのまま一緒に帰った。
やはり、夢でも冗談でもないらしい。
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