10
「姫ちゃんおはよう。」
「あ、祥子さん、おはようございます。」
祥子さんが明るく手を振りながら駆け寄ってきたので、私も祥子さんの方に近付いた。
「姫ちゃんこの電車?いつもと方面違うくない?」
「実は最近引っ越したんです。」
「引っ越し?はっ!まさかついに同棲?」
「へっ?えっと…。」
祥子さんは一人盛り上がりキャーキャー言い出すので私は焦る。
同棲だったらどんなによかったか。
実は親から、“もう三十になるんだから家を出なさい”と半ば強引に実家を追い出されたのだが、さすがにそんな事恥ずかしくてとても言えない。
「これは大ニュースだわ。」
私がもたもたしていたので、祥子さんは肯定と受け取りニヤリと笑った。
「ちょっと祥子さん、違いますって。」
慌てて否定するも、祥子さんはもう聞く耳持たない。
「さっそく真希ちゃんに報告しなくっちゃ。」
「祥子さんってば~!」
今回ばかりはきちんと否定したつもりだったのに、”朱宮姫乃があのエリートイケメン彼氏とついに同棲を始めた”という間違った噂が、社内に瞬く間に知れ渡っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます