蒼天龍世記

Yura。

序章 断罪と雷雨

 ――土砂降りなどというものではなかった。 


 濁流が大地を叩きつけるように、激しく降って、降って、降り注いでいる。


 その雨を、轟音と共に雷が彩る。雨の勢いに負けず劣らず激しく、いつどこに落ちてもおかしくなかった。


 森の開けた場所で――石が積み上げられてできた遺跡の前で――男の驚愕が浮かんだ顔を、雷がカッと鋭く照らした。


 男が見上げているのは、森の木の高さをゆうに超えた異形の化け物――妖。


 龍と見まがうほど巨大だが、その鱗はぬめりと光り、蛇によく似た姿をしていることが分かる。無数の骨を複雑に組み合わせた翼のようなものが、いくつも体から生えていた。


 その牙の突き出た口が、満足そうに歪められた。


「――お前の娘は、いずれ必ず龍の裁きを受けるだろう‼︎」


 背筋の凍りつくような不気味な声で高らかに断言し、妖は放心状態の男に飛びかかった。


 その瞬間、男が咄嗟にやったこと。


 またも激しく雷が天空を突き刺し――……、




 双方ともに、血飛沫が上がった。

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