1.新たな始まり
「いち、に、さん、し!ご、ろく、しち、はち‼︎」
コウは体操をすると同時に、『ハキハキ』と『大きな声』で『間髪入れず』に発声をする。
(はぁぁぁ〜。なんでこんな事やってるんだろう……)
コウは心の中でため息をついた――
*
――時は少し遡り、朝にクラスルームでミラ先生を待っていた時から話は始まる。
(遅いな……)
俺は、ミラ先生がなかなか来ないことを不思議に思う。
いや、今日だけじゃなくていつも遅いのだけど、特に今日は遅いのだ。
いつ身についたのかは知らないが、俺のセンサーがビンビンに反応している。
――厄介事が来る、と。
(困ったな……今度は一体何が起こるんだ?)
俺は既に、何かしらは起こる事を前提に物事を考えるようになってしまっていた。
「なあ、アル――」
アルと話でもしていようかと思い、声を掛けた途端に、クラスルームに一人の声が上がった。
「生徒諸君、おはよう!!」
その声の犯人はレグルス学院長だった――
(絶対何かある!!)
残念ながら、ここ最近でレグルス学院長への日常での信用度(?)は、かなり下がっていた。
《剣術大会》が過ぎたばかりの頃は、レグルス学院長の《剣聖》としての一面に触れて、尊敬していた。
だが、あれから何日も過ごしていくと、レグルス学院長のトラブルメイカーとしての一面に、触れざるおえなかったのだ。
例えば、オセロとかリバーシとか言う、レグルス学院長が生み出した――らしい――ゲームで遊ばせられた事があった。
(まぁ、あれは案外楽しかったが……
って、違う違う。……つまり、今の話から言えることは――)
――レグルス学院長が何か起こす気だ。
……という事だ。
ゴクリ、、
今度は何が来るのか、俺は固唾を飲み込んでレグルス学院長を見つめる。
「うん。みんな良い目だね〜!」
(何だ?何が来るんだ⁉︎)
「こら、そこの女子睨まないでよ」
(早く!言うなら早く‼︎)
少し焦らしてきたレグルス学院長は、遂に俺たちに告げる――
「――みんな、ラジオ体操をしよう‼︎」
「「「…………」」」
「いや、無言は無言で酷くない?」
レグルス学院長は、冷静に俺たちにツッコミを入れた――
*
――そして現在に至る。
(体操だから、運動することは分かっていたけど、こんな体操は初めて見るな。)
これも、レグルス学院長が思いついたものらしい。
思わず俺は、こんなにも色々な発想が出てくるのも、それはそれで凄いと思ってしまった。
ふと俺は、訓練場を使って『ラジオ体操』というものをしている俺たちは、どんな風に見えるのかを疑問に思った。
(いや、考えないでおこう……)
あまり見たことのない体操を、集団でしている姿を少し想像してみた俺は、頭を振る。
別の事を考えることにした。
(―――そういえば確か、この後大事な話があって、これはただのオマケだとか言ってたような…………って、何でやってるんだろ…俺たち……)
表面上は、レグルス学院長にバレないように、しっかりとラジオ体操をする俺だった――
*
「では今から重大発表をします‼︎」
訓練場に集まる全一年生に、レグルス学院長は語り始める。
それを、俺たちはその場に座りながら聞く。
「――数日間の間、君たちには《実戦訓練》を行ってもらいます!!」
ラジオ体操で少し疲れている俺たちに、また新たな学院生活が始まろうとしていた――
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