IMADOKI ~イマドキ ~

ハル

第1話 私の存在

「ねえ、君いくつ?本当に16?」


と、中年のおじさん。



「そうだよ」

「それにしても良い身体してたね?」

「イマドキの子って発育良いじゃん?」

「それはねー」


「あっ!私にも煙草くんない?」


「駄目、駄目。16でしょう?未成年は喫煙したら体に悪いって!」


「ええ~っ、良いじゃん!一本だけ! ねっ!第一、煙草吸うの体に悪いって言っておきながら、おじさん吸ってるじゃん!」


「ハハハ…おじさんは大人だから」

「大人でも体に悪いの事実でしょう?」

「そうだな。それより、こういう事してるの親は知ってるの?」

「知らないよ。そういうおじさんこそ奥さんいるじゃん!こんな事してるのバレたらヤバイでしょう?」


「まーね」

「でも、大人の世界だし、不倫とか浮気とか当たり前の世の中だもんね」

「まあ、そうかもしれないけど程々にしないと駄目だよ。心配するよ」

「まさか! ウチ、共働きだし私が何してようが干渉しないから」

「そうか?」




私、小山 悠香(こやま ゆうか)。16歳。

ピアス、援助交際(援交)、喫煙なんてしてる高校生



でも、クラスの子は知らない。


勿論、学校側でも先生や他の生徒も知らない。


無理もない。


だって私はクラスに溶け込んでいないから。


まあ、もしかすると噂になって冷たい視線で見られて、一目置かれてる可能性もあるかもしれないけど、それは、それで良い。


事実を否定する気なんてないから。


自分の好きなようにしてるだけだし、迷惑かけてる訳じゃないから。


だって、結局自分自身の問題じゃない?


違う?





ある日の学校帰り。



「そういや、今日、母親いるんだっけ?面倒……でも、真っ直ぐ帰んなきゃなぁ~」




その途中 ―――




音楽が流れていて、人が群がっている場所に遭遇。



「…ダンス……凄いじゃん!やるー!」




ドキン

胸の奥がノックした。



男の子、四人のダンスのメンバーに、一人だけ、一際目立っている奴がいたのだ。



「……………」



少しだけ観賞して、その場を去った。




次の日 ――――



「えー、このクラスに転入してきた、片桐 結哉(かたぎり ゆうや)君だ」



「転入生ねー……」




ドキン

私の胸の奥がノックした。




「…あれ…?…あの子…」



自己紹介が終わり、私の隣に腰をおろす転入生。



「ねえねえ」

「何? H.R. 中だよ」



視線は前に向けた状態で、振り向く事なく、耳だけは、私の方に集中してくれてるようだ。



「良いじゃん!どうせ誰も聞いてないんだし」

「そうとも限らないんじゃないの?俺は聞いてるけど?」

「だけど、返事してんじゃん!ところでさ、昨日、ダンス踊ってなかった?」

「えっ? ダンス? 人違いじゃないの? 俺、運動苦手だし、そんな俺がダンスなんて尚更だよ」



「そっか……じゃあ他人の空似ってやつかな?世の中3人いるって話だし…ごめん、ごめん」



そう言うと窓の外を眺める私。


そして、H.R. が終わり、彼の前には人だかり。

私は席を外すのだった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る