202011 ジャパロボ チーム祐奈3-7

渋谷かな

第1話 チーム祐奈3-7

「はあ!?」

 目覚めた祐奈には悲しみを思い出させない仕掛けが必要だった。

「おまえは今日から、この子のお母さんだ。」

 綾教官から赤ん坊の女の子を手渡しされる。

「なんで私がシングルマザーにならなければいけないんですか!? まだ私は男性とお付き合いしたこともないんですよ!? そんな殺生な!?」

「おまえの細胞から作った子供だからな。当然、おまえが育てるべきだ。」

 赤ん坊は祐奈の細胞から作られた遺伝子操作された子供であった。

「いつの間に!?」

「おまえが寝過ぎなのだよ。逆らうのか? これは上官命令だ。命令に従えないのであれば、裸逆さ吊りでジャパロボに吊るすしかないな。」

「お許しください!? それだけはご勘弁を!? 私に人権はないんですか!?」

「ない。」

 あっさりと言い放つ綾。

「この子は任せたからな。私に育児放棄の幼児虐待でおまえを逮捕させるなよ。」

 綾は祐奈の元に赤ん坊を置いて去って行った。

「子育てなんかしたこともないのに、私にどうしろという!? おい、明治天皇、おまえが・・・・・・しまった!? 明治天皇は私の寝相が華麗過ぎて壊したんだった。」

 今も明治天皇は祐奈の中で生き続けている。

「おぎゃあ! おぎゃあ!」

 子供が泣き始めた。

「ウワアアアアアー!? お腹が空いたのかな!? 私は母乳なんかでないぞ!? 牛乳でも飲んでくれるのかな!?」

 祐奈の育児が始まった。

「泣かないで!? 赤ちゃん!? ・・・・・・そうだ。この子の名前を決めなくっちゃ。」

 その時、本棚に不思議の国のアリスがあった。

「アリスはそのまんまだから・・・・・・イリスにしよう。」

「おぎゃあ!」

「そうかそうか、おまえも名前が気に入ったか。わ~い。良かった。」

「おぎゃあ!」

「そうだ。名字も森田のままでは、この子も危険にさらされるかもしれない。いっそう、この機会に名字も変えるか。」

 再び祐奈は本棚を見た。女優広瀬の写真集があった。

「よし。今日から私は広瀬祐奈だ。赤ちゃん、あなたの名前も広瀬イリスですよ。」

 これが祐奈が森田から広瀬に名字を変えた経緯だった。

「おぎゃあ!」

「ワッハッハー!」

 新しい家族ができて久しぶりに祐奈の顔に笑顔が戻った。


「お母さん、負けちゃったよ。」

(相手の優子はお母さんのチームの自衛隊パイロットだとは言えねえ!?)

 第4回全国ジャパロボ大会で準優勝になったイリス。遺伝子操作ですくすくと1年で16才にまで成長していた。

「大丈夫よ。イリスはよく頑張ったわ。ご褒美を用意したのよ。」

「やったー! お母さん大好き!」

 仲睦まじい親子である。

「はい! あなたの妹のさとみちゃんです!」

 こうして妹のさとみは姉のイリスの準優勝の記念に誕生した。

「え!? マジ!?」

「イリスちゃんを育てていたら、楽しくてもう一人子供が欲しくなっちゃった。アハッ!」

「嘘でしょ!? お母さんが育児ノイローゼで私を育てられないっていうから、私は培養液に入って急速成長させられたんだからね!?」

 不妊治療など必要ない科学力であった。

「zzz。」

「こら!? 寝るな!? お母さん!?」

 寝て誤魔化す祐奈であった。

 つづく。

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