誰かの役になれたのなら、それだけで····

コージ

第1話 みんなの役に立ちたい

「何度も言わせないで。」

「そんな事を言われても····」


「ハッキリ言って目障りなの、特にこの髪の色が!」


 イジメをしている女生徒が、イジメを受けている女生徒の髪を引っ張った。


「痛いっ!止めて!」

「髪を引っ張ってるんだから痛いにきまってるでしょう?」


 銀髪の綺麗を無雑作に引っ張りまわす。


 クラス中の生徒達が止めに入る。


「麻子さん、いい加減にしないと先生に言うわよ。」

一人の女生徒が止めに入る。


「ムカつくのよ。何でコイツだけ髪を銀髪に染めても何も言われないの?私なんか、ちょっと茶髪にしただけで、生活指導受けて、親まで呼び出されて、翌日まで元の色に染め直せ、って言われたのに、なんでコイツだけ銀髪が許されてるの?」


「仕方が無いでしょう?彼女はハーフで、髪の色は母親譲りなの。産まれた時からこの色なんだから。それに学校も了承してるのだから、あなたが何を言っても学校の許可されている事は変えられないわ。」


 必死に仲裁に入ってくれているのは、銀髪の美少女の親友だった。


彼女は「勇気と正義」と言う言葉がピッタリな少女だ。


キ〜ンコ〜ン、カ〜ンコ〜ン。


 始業の鐘がなった。


「チッ、親が金持ちだから学校にかなりの額の寄付金でもして許可をもらった人がいい気にならないでね。」


 落ち込んでいる銀髪の少女に親友が声をかける。


「ナナ大丈夫?」

「うん、助けてくれてありがとう。」


「先生来ちゃうから早く席にもどう。」


「うん。」


 イジメっ子の麻子は先に席についていた。

 二人は教室の一番後ろの窓側の最高の席だった。


キーーーン


 席につく瞬間、ナナが異変に気づく。

「優子、早くこの教室からでましょう!」


 突然のナナの言葉に、優子はナナが何を言っているのかがわからなかった。

「ナナ、何言ってるの?もうすぐ先生が来て授業が始まるだよ。」

「お願い、私の言うことを訊いて。この教室にいるとダメだ!って私の中の私が言ってるの。だからお願い!早く一緒教室から出て!」


 優子は何がなんだかわからず、とりあえず親友が出した手を握り、教室から出る為に走った。


「みんなも、早くこの教室から逃げて!お願い早く!」


 走りながらナナは叫んだ。


 教室を出る扉を開き、ナナと優子は廊下に出た。

 クラスメイト達はナナの言う事がよくわからず近くに座っている友達にどうするか話し合っていた。


「みんな!早く教室から逃げて!」


 ナナは廊下から教室にいるみんなに声をかける。


「優子、お願い。一緒にみんなに教室から出るように大声で呼びかけて。」


 優子はこの時点でも、まだナナの言ってる事や、やっている事に理解できなかった。が、親友の頼みなので、大声で呼びかけてみた。


「みんな!早く教室からにげろう!」

 二人して大声で呼びかけていれば、となりのクラスや先生達が何事かと集まってくる。


「キャー!イヤー!」

 次々と叫び声が聞こえてきた。


 何があったかはわからない優子は、必死に教室にクラスメイトに呼びかける。


「ナナ、私ちょっと見てくる。」

すると。

「ダメ。絶対にダメ。もう手遅れなの。」

「え?何が手遅れなの。」


 当然、叫び声が訊いて先生や他のクラスの生徒達が集まってきた。


「どうした!一体何があったんだ。」

 一人の先生がナナに話を聞く。


「あぁ〜、ギャア〜!」


 助けに入ろうとすると教師の一人が扉を必死に開けようとるすが、なかなか開かない。


「一体どうなっているんだ!すぐに教師先生と学園長を読んできてくれ。」


一人の先生が職員室に走っていった。


 廊下を走ってはいけません。


そんな校則を無視して、体育教師らしくダッシュで職員室に向かった。


「優子、スマホ持ってる?」

 優子は「あ、」と気付きスカートのポケットからスマホを取り出した。


「私のスマホはカバンの中だから、多分もう無いと思うの。だから優子は早く警察と消防署に連絡して。」


「わ、わかった。え、えぇ〜と、警察は···」

 

 警察や消防になど、一生の内にそうそう何回もかける事じゃないので、優子はかなり慌てていた。


「優子、貸して。私から話すから。」


「う、うん。お願い。」


「はい、こちら警察です。事件ですか、事故ですか。」


「事件です」  


 教室の中はどうなってしまったのか?

 どうして、ナナはその事に気が付き逃げられたのか?


 今になって、電話をしているナナを見ながら考えていた。


「はい、私は東和女子高等学園の生徒で、今教室で何かが大変な事が起こってます。お願いします。すぐに警察の方に······」



 今だに教室の扉は開かなかった。

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