28話:友達から正当な理由で誘いを断られたときでも割とちょっと悲しい気持ちになる

「なんだよアカリのやつ……」


 アカリにひとしきり街を紹介して、今日は解散となった。


 現在俺はレベル上げに勤しんでいる。


 場所は南の草原だ。

 現在の俺のレベルは14。

 今日の戦闘でトーガに勝てないとなると、新しい生得スキルが必要になるということで、このレベルにしておいた。


 ぶっちゃけトーガにも生得スキルを幾つか身につけて勝利する、という方法もあったのだが、その不確定な勝ち筋を目指すのならば、現在の揃っている手札で戦ったほうが性に合っていると思ったからこうした。


「今回は一緒にイベントやらないって……」


 南の草原には、それなりに人がいる。

 20レベルまで上がりやすいこのゲームに置いて、ここは初心者を脱した人間の来る場所である。


 そんなところで俺がこんなブツクサとアカリの名前を出しながら狩りをしているのは、とある理由からである。


 先程のアカリへの案内の前。

 正確にはイベントに関して話していた時。


 俺はいつものようにアカリに一緒にイベントに参加しないかと誘おうとした。

 割とアカリとは一緒にイベントやゲームをプレイすることが多い。


 それは偏に俺とアカリのゲームにおける能力が離れているからである。

 俺だって100回戦ったらアカリから1勝くらいできるとは思えるが、それくらいに俺とアカリの能力差は絶望的なのである。


 だけどアカリは基本的にこうして同じゲームをしていれば、誘ってくれることが多いので今回もと思っていたが、


「何が”今回はダンと戦ってみたいんだよ”だ」


 アカリの返答は今回は無理、というものだった。

 何やらアカリの中で俺と戦い的な衝動が湧いているのか、こっちはこっちで適当に人集めたりするから頑張ろうねー、ということだ。


 いや俺あんまりゲーム友達とかいないのだが。

 それ知ってて言っているのか?


 飛び込んできた狼……ウィンドウルフを切り捨てる。

 今日は15レベルまで上がったら終わろう。


「とりあえず思いつく人に協力要請は出したけど……」


 それでも、SNSの繋がりがないことはない。

 そこで片っ端から連絡をして、協力を要請したにはしたが、


「流石に2日間ソロ無理だよな」


 二日間ソロで殺し合いに興じる、というのは中々に鬼畜である。

 せめて見張りとかできる信頼できる人がほしいが……


 新しいウィンドウルフを見つけ、ヌルボールで牽制をし、距離を詰める。


 トーガとの戦いに比べると、モンスターは流石にあくびが出る。


 そんなに速くない。

 直線的な動き。

 容易に予想できる攻撃方法。


 流石にこれに倒されるほどSPDが遅いわけではない。

 未だに初期武器を使っているせいで効率は悪すぎるが、パリィを適度に混ぜて練習することにより、良い暇つぶしにはなっている。


「おっ」


 そこで2つの表示が視界に表示される。


 一つは連絡。

 『点心』さんから……『乗りたいけど条件付き』という連絡。


 一つはお知らせ。

 レベルアップと、スキル獲得。

 スキル名は、『パリィ』


「は?」

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