にわにはにわにわとりが ~魔力ゼロの異世界転生者と魔眼持ち銀髪チート美少女のどうしたってスローライフにならない日常騒動記~
高光晶
プロローグ的な何か
なあなあ、あんた。宝くじって当たったことある?
え? あるの? マジで?
ちょ、いくら当たったんだよ? 当選金だよ、当選金。
は? 三千円?
なんだよおい……。期待させんなよ。それくらいなら俺だって当たったことあるって。
普通『宝くじに当たった』って言えば、三億円とか五億円とか……、せめて百万円とかじゃないの?
まあいいや。
とにかく宝くじってのはなかなか当たらないもんだよな。
百万円が当たる確率よりも、現実には交通事故で死ぬ確率の方がはるかに高い。
もっとも、宝くじはひとりで何枚も買えるから、単純に比べられるものでも無いけど。
おっと、話がそれたか。
えーと、つまりだな。俺は特別幸運というわけでも無い。もちろん特別不運ということも無い。
だけどね。
そんな平凡な俺だけど、当・た・り・ま・し・た・よ。
当たりも当たり。大当たり!
いや、宝くじじゃ無いんだけどな。
でも宝くじで三億円当たるよりも確率低いだろ、ってくらいの素晴らしい引きだったぜ。
え? もったいぶってないでさっさと話せ?
まあまあそう言わずにさ。
じゃあ、ヒントその一。
『異・世・界』
どう? わかったか?
ああ、言うな言うな。そりゃこれだけじゃわからんよな。
ではでは、ヒントその二。
『転・生』
おい。ちょっとそこ。何だよそのため息は。
妄想乙とか言うなよ。本当なんだって。俺もよくわかんないんだけど、地球じゃ無いんだよ、ここ。
おまけに魔法もあるんだぞ。ファンタジーだよファンタジー。剣と魔法の世界。冒険と浪漫の物語。ビバ・ファンタジー!
しかもあれだ、前世の記憶持ったまま転生ってやつな。
うひょー。完全にテンプレじゃん。
となれば、生まれ持ったチートな能力とかスキルとか使って、前世の記憶フル活用して、俺TUEEEEEで、さらにかわいい女の子に囲まれてハーレムとか?
がぜんやる気が出てきたぜ! よっしゃ! やってやろうじゃないの!
せっかくのチャンス、存分に二度目の人生楽しんでやるぜ!
……。
…………。
………………。
って思ってましたよ。子供のころはね。
ん? いきなりテンション下がったって?
そりゃ下がりもするさ。
だってあんた。魔法が使える世界だぜ?
当然攻撃魔法とか治癒魔法とかチート能力でバンバンぶっ放したいだろ?
でもな、そんなファンタジー満載なこの世界に生まれたにもかかわらず、俺魔力ゼロなんだわ。
この世界ではすべての存在が魔力を持ってる。
人間はもちろん、野生の動物やそこら辺の草にすら魔力が宿ってるんだよ。
驚いたことに石ころやレンガですらごく微量な魔力を持ってるんだ。
なのに魔力ゼロだぜ? わけわからんよな。
魔法が使えないなら他のチートは? って思うだろ?
残念なことに体力は人並み以下。剣術だって習ってみたけど四歳下の妹にも負ける始末。
なんかチート能力があるんじゃないかと思っていろいろ試してもみたさ。
何も無い空間に向かって「ステータス!」って叫んでみたり。
市場に並んでる商品に向かって「鑑定!」って唱えてみたり。
街の外れにある広場でこっそり「来たれ! 我が従者よ!」って呼んでみたり。
全部無駄だったけどな。
何も起こらなかったけどな!
能力を再分配するチートも、他人の能力を盗み取るチートも、某ネコ型ロボットのポケットみたいな無限収納チートも、思いつく限り試したけど結局なーんも無かった。
ちなみにその頃のことはあんまり思い出したくない。完全に俺の黒歴史になってる。
なんというかね。
必死だった俺は、周りから自分がどう見えてるかを気にする余裕が無かったんだ。うん。
知らない人から見るとただの奇行だもん。思い返して悶絶しそうになるけど、今さらどうにもならない。まわりからは相当生温かい目で見られてたんだろうな、きっと。
まあ多かれ少なかれ、年頃の男の子はわりとそういうことがあるらしく、世間一般的には『見えない壁に立ち向かう』と表現されているらしい。日本語で言うところの『中二病』ってニュアンスに近い。
うわあ。穴があったらマジ入りたいわー。
…………まあ、てなわけでな。
天才的な戦闘技能を持っているわけでも無く、唯一無二のオリジナル能力があるわけでもなく。容姿は平々凡々。生まれも平民。特殊なチートもこれといって無し。魔法にいたっては魔力がゼロということもあって世界最下層レベル(というか最下層確定だと思うが)。
なんつーかね。『異世界』『転生』『俺TUEEEEE』かと期待したら、現実は『異世界』『転生』『俺YOEEEEE』だったわけですよ。
三億円当たるよりはるかに低い確率で的中したのは良いけれど、どう考えてもこれ、ハズレの方に大当たりしてるよね。
いや、ハズレなのに当たりっておかしいけどさ。
今さら言ってもしょうがないのはわかってる。
与えられた環境でやっていくしかないのも覚悟はできてる。
でもな、これだけは言わせてくれよ。
「責任者、出てこいやああああああああ!」
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