腹黒ショタとあたまゆるゆるおねえさん

皮以祝

第1話 ショタとおねえさん

 目の前に財宝がある。


「ねえ、しょたちゃん」


 シスねえが僕を呼ぶ。


「全部これに入れて」

「りょーかい!」


 シスねえはどんどん魔法袋の中に目の前の財宝を入れていく。


「……ま゛、ま゛て゛ぇ……」


 汚い声が聞こえ、見れば、上半身のみになった男が腕の力だけでこちらに近づいてきていた。死にかけてるのに財宝がそんなに大切か。


 僕の腕くらいの長さの短剣で首を刺してあげた。


 すこし口から血を吐いて、もう抗う力もないのか、そのまま絶命。

 シスねえはこちらに気づくことなく袋に運んでいた。





「あー! しょたちゃん、何してるの!」


 袋を手に戻ってきたシスねえが叫んだ。


「おねえちゃんがやるのに!」

「シスねえは袋に詰めてたでしょ。大した手間じゃなかったからいいよ」

「もー! そうやって一人でやっちゃうんだから」

「よくいうよ。じゃあ、帰ろう」

「うん! 今日もたくさん稼げたね!」






「はい。確認いたしました」

「どうも」


 ギルドの人からカードを受け取る。


「では、こちらが報酬になります」


 受付越しに報酬を受け取り、テーブルで待っているシスねえの方に向かった。


「あっ、しょたちゃん、貰えた?」

「うん、受け取った」

「そっか! じゃあ、帰ろ!」


 シスねえは手をつないでくる。


「そうだね。帰ろう」

「うん!」


 八百屋や肉屋に寄りつつ、借りている宿に帰ってきた。


「今から作るから、待っててね!」

「わかった」


 シスねえはエプロンを付けて、フライパンに火をつけ始めた。

 僕は今日の稼ぎを数え始めた。今日の盗賊はかなり財宝を貯めこんでいたので、かなり稼げたはずだ。


 討伐報酬は当然すべてこちら、発見した財宝は、ギルドとこちらで2:8。実際は一部をギルドに提出せずに持ったままなので8割よりは少し高くなっている。


「しょたちゃん、どうだった~?」

「2か月は何もしなくてもいいくらい」

「じゃあ、次は、えっと?」

「1か月後だよ」

「やったぁ。しょたちゃん働き過ぎだから、しっかり休んでね!」

「シスねえもね」


 半分を貯金に、半分は生活に回す。今回のは当たりの盗賊だった。


「でも、そろそろこの町も終わりかも」

「え~、そうなの~?」

「うん。依頼も減ってきちゃったし」

「そっかぁ、結構仲良くなった人もいたんだけどなぁ……魚屋さんの、あれ、なんて名前だっけ」

「シスねえ、火、大丈夫?」

「え、あ、あぶなかった! ありがと、しょたちゃん!」


 こちらを向いていたシスねえはフライパンに向き直った。



 僕達は、盗賊を殺して生活をしている。

 

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