あ、あんた、あたしに欲情したなら付き合いなさいっ!〜友達以上、でも恋人はおれ的になしの幼馴染女子が日に日に女子力………ではなくヒロイン力を向上させている件について〜
第18話 「ねえ、こうでしょ? こういうのが奏人のお望みだったんだよね?」
第18話 「ねえ、こうでしょ? こういうのが奏人のお望みだったんだよね?」
「ん……んん…………」
「んぁっ……」
朝。
なぜか身体の上に感じるズッシリとした重みと、頰に何かがめり込むような感覚に促されて奏人は目を覚ました。
カーテンを閉めていないせいか、日の光が差し込んで部屋が妙に明るい。
(あれ? カーテン閉め忘れたっけ……?)
ーーゴリッ……
「ふへぇっ……?」
「おはよう奏人。今朝は随分とゆっくりした目覚めね。もうすぐ11時になるんだけど?」
「
感じていた重みは菜々そのもの。
視線を腹部に落とせば、おれの上に馬乗りになっていて、なおかつ現在進行形で拳をおれの頰にあててゴリゴリとしている。
「ねえ、こうでしょ? こういうのが奏人のお望みだったんだよね?」
そしてこめかみにはっきりと青筋を浮かべてはどんどん拳を食い込ませてきた。
「
「昨日奏人が自分で言ったじゃない。寝てる幼馴染を起こすなら上に跨がるか、頬をツンツンしろって」
「
「ふんっ……」
そこまで抗議してようやく頰はゴリゴリの刑から解放された。
跨がれてるのはそのままだけど。
「朝っぱらから何をそんなにカリカリしてんだよ?」
「へえ、この状況を見て私がイライラしないとでも思ったわけ?」
「この状況って?」
「ん……!」
菜々がビシッと指を指したのはおれのすぐ横で、それにつられて視線をそちらに持っていく。
するとこの世に顕現した天使………楓がおれのシャツの裾を握ってすやすやと穏やかな眠りについていた。
その光景が目に焼き付いた瞬間、脳がフリーズ。
そして今まで生きてきた中で一番と言っても過言でないほどの冷や汗に見舞われる。
「えへへ……お兄ちゃんってば………食いしん坊なんだから……」
え、嘘?
何で?
何で楓がおれのベッドで、おれの真横で寝てるわけ?
「あたし知ってるわよ。こういうのを朝チュンとか
「それは断じて違う! ドロドロのバッドエンドしか見えてこない不吉なワードはやめてくれ! おれは至って無実だから!」
「現行犯が何を言ってるのよ。楓ちゃんに手をかけるなんて
「菜々裁判長! まずは弁解の機会をください!」
「………チャンスは一回だけだからね」
「女神様!」
よしっ、首の皮一枚はつながった。
ていうかそもそも、何で
まずは昨日の夜にあった出来事を思い出そう。
そこさえはっきりさせて、きちんと説明すれば何も問題ないはず!
〜〜〜
「じゃあお兄ちゃん、次です!」
耳かきの余韻から戻ってきた楓が、ワクワクした表情でそう言ってきた。
「もう夜も遅いから、すぐに終わるやつだけな」
「大丈夫です! 次のはとっても手軽な甘え方ですから」
「ならいいけど」
はて、手軽な甘え方とは一体?
ーーカチッ……ピーーー…
そんな電子音と一緒に部屋の照明が白光灯から常夜灯へと切り替わる。
楓がベッドの棚に置いてあったリモコンで照明を切り替えたようだ。
「楓?」
「あっ、気にしないでください!」
「いや気にするなって言われても……」
「いいから、いいから」
けれども、楓は珍しく強引に、有無を言わせない様子で、次の行動を指示してきた。
「じゃあお兄ちゃん、こっちの枕の方にもたれて……」
「………これでいいか?」
「ばっちりです! では失礼して……」
そして楓はおれの股の間に入り込んできて上半身を胸に預けてくる。
「ちょっ……楓!」
「しーっ……静かにしてください」
「静かにって……何してるんだよ?」
「見ての通りお兄ちゃんの心音を聞いてます」
「心音て……」
ーードクンドクンドクンドクン……
オレンジ色の鈍い光だけが残る、静寂しきった部屋。
緊張で少し早くなっている自分の鼓動が嫌でも聞こえてくる。
「お兄ちゃん……」
「……どうした?」
「心臓の音、早いです」
「ああ、おれもそう思う」
「でも、とても落ち着きます」
「それは良かった。ならそろそろ離してくれると嬉しんだが……」
「…………」
「おーい、楓〜?」
「あともう少しだけ、もう少しだけこのままでいさせてください……」
〜〜〜
それから先のことは覚えてない……というかまず間違いなく寝落ちしたから覚えていないだけだ。
とはいえ、昨夜のことを余すことなく菜々に伝えたらそれこそ
あ、これが俗にいう詰みってやつか。はは。
「で、何をどう弁解するわけ?」
「……とりあえず情状酌量で見逃してもらうってわけには?」
「いくか! バカ!」
どうやら菜々裁判長の情状酌量はもらえないらしい。
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