第49話 戦利品
そこで野営をして翌日山を越えて山から出てきたカイとクズハ。来た時と同じ道を逆に歩いて途中で野営をし、途中で遭遇する魔獣、魔物は雑魚扱いで倒しながら最北の村に戻ってきた
村に1軒しかない宿に入ると部屋を取り、食堂で久しぶりに暖かい料理を口にする。この村のクエストでいたランクBの冒険者達は既にクエストを終えて王都に戻ったらしい。
そして翌日最北の村を出たカイとクズハは街道を南に歩いていき、5日目の夕方遅くに王都に戻ってきた。
ギルドには明日報告することにして、王都で宿を取ったカイはその日の真夜中にジムの酒場に顔を出した。
「帰ってきたか」
店の扉を開けて中に入ってきたカイに声をかけるジム。今日の夕方に帰ってきたところだと言いながらカイが椅子に座るとその前に薄めの酒が入ったグラスを置き、
「どうだった?」
早速聞いてくるジム。
「確かに強いのがいた。聞いていた通り山の麓がランクAクラスで山の中に入るとランクSがうじゃうじゃいた」
そうして山での話をするカイ。ジムは自分の酒を作って飲みながら黙ってカイの話を聞いていて、聞き終わると
「なるほど、頂上付近にいたのはランクSSかそれ以上のNMが2体か。それにしてもそいつらをやっつけて帰ってくるお前さん、相当なもんだな」
「手こずったけどな。倒す順番を間違えなければ倒せないNMじゃなかった」
カイの強さはエステバンの手紙とここでの振る舞いで十分に理解しているジム。
「なるほど。それで宝は出たのか?」
「刀が出たが、探しているのではなかった」
「ほぅ。刀が出たのか。初めてじゃないのか?」
ジムも宝箱から刀が出たという話を聞いたのは初めてだという。
ジムの言葉に頷いて、
「今回で確信したよ。強い敵。それも山頂にいた以上に強い敵じゃないと俺が探している刀は落ちないって」
「カイの話を聞いているとそうなるな。ダンジョンボスが持ってるとしても相当難易度の高いダンジョンのボスを倒さないと出ないってことだな」
ジムの言葉にそういうことだと思うと大きく頷くカイ。
「ランクのことはよくわからないがおそらくランクSSSクラスかそれ以上のNMだろう」
「となるとこの前地図で説明したダンジョン攻略が次の目標になるな」
「そうなる」
「キアナに戻るのか?」
「そうしようと思う。残念ながら王都近郊じゃ期待できないしな」
「わかった。俺はこっちで引き続き情報を集めて、何かわかったらキアナのエステバン宛に手紙を送ろう」
「本当か?助かる」
「カイ、お前はおそらく大陸最強の冒険者だ。お前さんと良い関係になっておくってのは俺にとってもメリットがあるしな」
打算があることを隠さずニヤリと笑うジム。ここまではっきりと言うと逆に清々しいなと思いながらカイは頭を軽く下げて
「かたじけない」
宿で疲れを取った翌日、カイはギルドに顔を出してギルマスのキンバリーに事の次第を説明した。テーブルの上には山頂で倒したNMから入手したアイテムとNMの魔石が2つ並んでいる。ただ刀だけはテーブルに置かずにアイテムボックスに収納したままだ。
「なるほど。強い相手じゃないと落とさないか。それにしてもランクSSクラスのNM2体を倒すなんてカイくらいだろう」
「使命があるから必死だよ。でもこれで方針が決まったよ」
「そうだな。強いダンジョン、強いNM。これに絞り込めたか」
ギルマスの言葉に頷くカイ。ギルド職員がテーブルの上のアイテムを査定するために持って出ていくと、
「じゃあこれからの活動の場所は王都じゃなくてキアナになるな。戻るのかい?」
「そのつもりだ。これからはキアナをベースに周辺のダンジョンを探ったり、あとは港町フェス周辺にもあるらしいからそこにも。場合によってはローデシア、モンロビアにも行かなくてはいけない」
ギルマスはカイの話を聞きながら以前から思っていたことを口にする。
「アマミの街の使命ってのはわかってるんだが、それほど大事な刀を探す旅ならどうして1人じゃなくてもっと大勢のアマミのシノビが探しに行かないんだ?1人だと効率が悪すぎるだろう?」
「アマミに住んでいる長老から聞いた話だが、1人で探しに行くのはアマミの守り神である白狼様、フェンリルの意志らしい。これはシノビに与えられる試練の1つで村一番のシノビのみが受けることができる名誉ある試練で使命。昔からそう言われている」
「なるほど。だからその時の一番のシノビを刀探しの旅に送り出すのか」
頷くカイ。
「それと、もし大勢のシノビが外にでるとアマミの街が手薄になる。何が起こるかわからない今の時代、自分の街は自分で守らないとな」
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