第10話 アイテム屋 コロア


 ランクBになったカイは翌日から街の周囲の森の討伐クエストを受けて、日々森の奥にいるランクA,Bの魔獣をソロで討伐していた。


 森の入り口はランクC,Dだが奥に入るとランクB、たまにランクAの魔獣が現れるが

カイはそれを無造作に倒しては魔石を取っていく。


「怪力の腕輪、思った以上に効果があるな」


 新しい装備に満足するカイ。昼間は森でランクA、Bを狩り夕刻になるとギルドで魔石を売って報酬を得ているカイはこのキアナの街でも有名になっていた。


「とんでもないシノビがいるらしいじゃないか」


「ランクCの時にソロでダンジョンボスを倒したらしいな」


 カイはキアナの街で冒険者として活動しながら日本刀についても情報を収集していた。

仲良くなった冒険者仲間を中心に情報を集めてはいるが、今のところ幻の日本刀に関する情報は得られていない。


 それでも諦めることなく地道に情報収集するカイ。


 この日はギルドから教えて貰った街の中にある古びた店の前に立っていた。


「ここだな」


 ドアを開けると店内には様々な品物が置いてある。装備から装飾品や日用品。まるで雑貨店のようだと見ていると、


「何か用かい?」

 

 店の奥から一人のエルフが出てきた。そうして近づいてきたエルフはシノビであるカイの装備を見て、


「シノビを見るのも久しぶりだが、それにしても業物の日本刀を持ってるね」


「わかるかい?」


「鑑定スキルがあるからね。2本ともなかなかのモノじゃないか。よかったらよく見せてくれないか?」


 日本刀の村雨と小太刀の金糸雀をテーブルの上に置くとじっと2本の刀を見て、


「これは、まぁ2本共自動修復機能付きかい。刃こぼれしない刀なんて初めてみたよ」


「アマミを出る時に白狼様から授かったものだ」


「白狼様?」


「フェンリルだ」


「ほう。それでか」


「俺はカイ。見ての通りシノビだ」


 自己紹介をするカイ。

 目の前のエルフも


「あたしはエルフのコロアだよ。よろしく。そのカーバンクルはティムしてるのかい?」


「そうだ」


 肩の上に乗っているカーバンクルをじっと見ると


「随分とあんたに懐いてるね」


 とだけ言い、


「ところで、この雑貨屋に何の用で来たんだい?」


 カイはこの場所をギルドから聞いたこと。アマミの村を出て大陸中を幻の名刀2本を探す使命があることを話しし、


「そういうことで、長命なエルフなら幻の日本刀について何か情報を持ってないかと思ってさ」


「なるほど」


 そう言うと店の奥からお茶を持ってきて自分に入れ、カイにも勧める。


 そうしてお茶を一口飲むと、


「刀は珍しい武器で使いこなせる人も少ない。だから普通の冒険者が持ってるってことはまずないだろうね」


「確かに」


「あたしが前に聞いた話、前と言っても4ー50年前だけどね、その時どっかの貴族だか王家が冒険者から刀を買って手に入れたって話を聞いたことがあるよ」


「なるほど。王族、貴族が装飾品にするのか」


「ああ。でも彼らが持ってるとなると、それを譲り受けるのは相当大変だよ。その刀以上に価値がある品物との交換とかにしないとね」


「その通りだな」


「ただ彼らは刀の価値がわからないからね。持ってるのが一流品とは限らないよ」


「装飾品なら斬ることもないから刃こぼれとかしないし本当の価値はわからないな」


「そう言うことさ」


 流石にエルフだ。昔の話もよく知ってるなと感心し、


「もちろんまだ見つからずにどこかの宝箱かダンジョンボスかNMが持ってる可能性もあると思うけどな」


 カイはエルフに話ながら、むしろそっちの可能性の方が高いと考えていた。過去から何名かがこの幻の名刀を探してアマミの村から旅に出ているという話をコロアにする。


「なるほど。となるとやっぱりまだ見つかって無いっていう可能性が高いね」


「だとしたら大陸中を歩き回るだけさ」


 あっさり言うカイに、


「そういや最近西のダンジョンをシノビの者がクリアしたって聞いたけど、あんたのことかい?」


「そうだよ」


「そうか、ダンジョンボスが持ってるかもと思ってクリアしたんだね」


「片っ端からクリアしたらいつか見つかるだろう?」


「ふふ。単純な考え方だがそれが最短かもしれないね」


「なのでダンジョン攻略は引き続きやるけどもし何か情報が入ったら教えてくれるかい?」


「お安い御用だよ」


 そこまで話をするとアイテムボックスから片手剣を取り出して、


「ダンジョンボスから出た片手剣だが鑑定してくれるかい?」


 カイがアイテムボックス持ちだというのにも興味を示さずに置かれた片手剣を手に取って見て、


「今この片手剣はダンジョンボスから出たと言ったね?」


「ああ」


「この剣、片手剣使いなら取り合いになるね。追加効果で炎の精霊効果が付いている。斬ると剣の威力に炎魔法の威力が付与される優れものさ」


「ほう。流石にダンジョンボス。いいのを落とすんだな」


「そう言うことになるね」


 カイは片手剣をアイテムボックスに収納すると、


「じゃあ、刀を持ってる奴と交換するには十分かな」


「相手が片手剣使いのジョブなら乗ってくるだろうね」


「ありがとう。参考になったよ」


「しばらくこの街にいるのかい?何かわかったら教えてあげるからちょくちょくここに顔だしな」


「そうさせてもらうよ。そうそうこれは鑑定してもらったお礼とこれからも世話になる分だ。受け取って貰えるとありがたい」


「律儀だね。気に入ったよ」


 テーブルの上に置いた金貨1枚を手に取るエルフのコロア。


 お礼を言ってエルフの雑貨屋を出たカイ。エルフのコロアは店を出たカイの背中、

正確にはカイの肩に乗っているカーバンクルを見ていた。


(あのカーバンクルただの神獣じゃないね。カイってシノビ、神獣に相当好かれてるみたいじゃないの。カイ自身も相当の実力者だねソロでダンジョンクリアしたっていう話も当然だね。ランクA以上だよあの子)


 カイはエルフの店から宿に向かってのんびり通りを歩きながら、


「強くなってダンジョンを片っ端から攻略していくか」


 カーバンクルのクズハの背中をぽんぽんと叩き定宿に戻っていった。

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