第8話 初ダンジョン その2
翌日、朝からダンジョンに入ると20層に飛んでフロアを一瞥する。
今までの洞窟やトンネルの様なダンジョンと違いこのフロアはだだっ広く、神殿の中の様な造りになっている。
カイの右肩に乗っているカーバンクルを地面に降ろすと何も言わずともカイの全身に強化魔法をかけてくる。
「いつも悪いな」
声を掛けてから広いフロアを進みだすと神殿の柱の陰からランクAのゴーレムが飛び出してカイに襲い掛かってきた。体長は3メートル程。岩がくっついた様な体型からは想像がつかない素早さで、左右の腕を伸ばしてパンチを繰り出してくるのを交わしながら刀で腕に傷をつけるが、なかなか致命傷を与える事ができない。
氷遁の術を唱え、ゴーレムの首から上が氷漬けになって固まったところにジャンプした
カイの村雨が横払いに振られ、首と胴体が綺麗に2つに分かれてゴーレムを倒した。
「もっと早く倒せる様にならないとな」
結局この日は20層に降りたところで、そこにポップするゴーレムをひたすら倒して自分の戦闘能力アップの訓練をしたカイ。最後にはかなり短時間で倒せる様になった。つまりカイの戦闘能力が実践の経験でアップしていることになる。
翌日も20層に飛びこの日はフロアの攻略を進めていく。ゴーレムをさっくりと倒して
フロアの奥に進んでいくと大きな魔力の気配を感じ、すぐにその場から移動する。
するとさっきまでカイがいた場所に雷魔法が着弾した。
「ゴブリンメイジだな」
ゴブリンの上位種の魔法使いを見つけるとそいつに向かって猛然と突っかかっていく。ゴブリンメイジは魔法の詠唱をするもそれ以上のスピードでカイが近づいてきたので詠唱を止めて、持っている杖で殴りかかってきた。
その程度の攻撃はカイにとっては何の脅威にもならず、そのまま刀でゴブリンの頭と胴体を2分する。
その後もランクAの魔獣を討伐しながらフロアを進み、21層に降りる階段を見つけ記録してから地上に戻っていった。
そうしてダンジョンで1週間ほど過ごしカイは28層までクリアしていた。
それまで相当数の魔獣を倒していたが宝箱は出ておらず、フロアに湧く魔獣を倒す日々だったがカイ自身が目当ての刀がすぐに出るとは思っておらず、ここで自分の戦闘能力の向上させること、すなわち鍛錬だと割り切っていたのでモチベーションが下がることもなくフロアを攻略しては下層に降りていった。それに合わせてカイの実力もキアナに着いた頃からの短時間の間に数段上がっていた。
いつの間にかこのダンジョンの最深部まで攻略しているのがカイとなっていた。
ダンジョンの攻略状況についてはダンジョンを管轄しているギルドの掲示板に毎日攻略の情報が更新される。キアナのギルドの掲示板では西のダンジョンの攻略層が日々更新されていて一体だれが攻略しているのかが話題になっていた。
25層を過ぎると出てくる魔獣はランクA、それが集団で襲ってくる。そして28層からはランクAより強い魔獣が出て来ていた、
魔術の『舞』で複数体を倒し、また倒しきれなかったのは刀で倒しながら各層を攻略していたカイ。28層では同じ層を何度も攻略して鍛錬を続けた。
ダンジョン攻略を開始して1ヶ月、29層をクリアして下におりると、そこは今までとは全く違う風景になっていた。
「ボス部屋か…」
降りた先には頑丈そうな扉があり、そしてその横にはレバーが見えている
「クズハ、いよいよ最下層のボス戦らしい。日本刀が出るといいな」
自分でも力をつけたことがわかり負けることなど全く考えていないカイの言葉に肩からおりたカーバンクルも尻尾を振って応え、
「クズハもそう思ってくれてるか。じゃあサクッと倒してお宝を拝みに行こう」
カイがレバーを上げると、重厚そうな扉が音を立てながら左右に広がって、カイとクズハが扉の中に入ると背後で扉が閉まる音がした。
「ミノタウルス」
大きな部屋の中央には高さ5メールとはあろうかという頭は牛、首から下は人間と同じ格好をしているボスの魔獣が大きな斧を持ってじっとこちらを睨み付けている。
カーバンクルのクズハがすぐに強化魔法を掛けて背後の扉の前に移動すると、カイはおもむろにミノタウルスに向かって進み出していく
ボスのミノタウルスがカイの気配を感じるとすぐに大声で叫びながら斧を振り上げてカイに向かってきた。
大きな体型からは想像もつかない素早さでカイに襲いかかってくるミノタウルスの斧を交わすとそのまま壁際まで走り、向きを変えるや否や火遁の術を唱える。
ミノタウルスの顔で大きな炎が爆発し、一瞬仰け反ったところをカイが突進してその大きな脚に二刀流で斬りつけると、太腿がザックリと裂けてそこから血の様な緑の液体が流れだしてきた。
さらに大声で叫び、自分の足元に斧を振り下ろすが、その時カイは既にミノタウルスから離れており、再び火遁の術を今度はその切り裂いた傷口にぶつける。
ミノタウルスの身体がガクンとなったところで再び同じ場所に斬り付けると、痛みから膝をついたミノタウルス。
そこで背後から大きくジャンプして二刀流で首の付け根を斬るカイ。首を切り落とすことはできなかったが首からも血を飛ばして瀕死の状態になってくる。
そうなったミノタウルスの首に火遁の術をぶつけると、首が胴体から離れて、ゴロンと地面に落ちて絶命した。
「ふぅ〜」
ボスを討伐してもほとんど息を乱れていないカイの肩にクズハが飛び乗ってくる。
「思ったより弱かったよな、クズハ」
そうして倒れたミノタウルスを見ていると、光の粒になって消え、代わりにそこに宝箱が現れた。開けてみると、中には片手剣、腕輪、恐らくミノタウルスの皮、そして金貨と大きな魔石が入っていた。
それらをアイテムボックスに入れると部屋の奥に現れた魔法陣に乗って地上に戻る。そうしてダンジョン入り口の警備員に
「このダンジョンの最下層にいたミノタウルスを倒してきた」
「マジかよ。ここのボスが討伐されたのは久しぶりだ。キアナの街に戻ったらギルドに報告してくれるか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます