もしも魔法が使えたのなら
新吉
第1話 魔法のある世界
ここは昼でも暗い。人間が表現するならば薄気味悪い。迷い混んだ娘たちはよくそう話しては、なぜあなたはこんなところにいるの?そう僕に問いかける。
「ここが僕の生まれたところだからだよ」
僕は基本的に夜に活動する。日の光にあたると焼けてしまうが、昼でも暗い地下にいればなんとかなる。ここは不思議だ、太陽に近いのに暗い。僕と同じ種族は滅んでしまった。残ったのは僕ひとり。だけど僕らのようなモンスターがゴロゴロいる。
空の上の空想の世界だ。それを教えてくれたのは魔女だ。魔女はこの世界のことをよく知っている。世界の始まりも世界の終わりもきっと知っているんだろう。
初めて会った時一目惚れの真逆の感情を抱いた。老婆は小鬼を従えて偉そうにしていたからだ。会いたくない。だが彼女は意外と面倒見がよくて、お互いの縄張りを荒らさないこと、仲良くすることルールを守るよう説得する。化け物が集まって仲よしこよしは難しい。話し合いなどできないことも多い。だからときに魔法が使われる。
きっと僕は彼女からお叱りを受けるんだろう。呼び出しではなく訪問、僕のねぐらの墓地にわざわざやってきた。老婆ではなく黒髪ストレート美女がけだるげにノックのポーズをとっていた。
「コンコン」
「お茶目な人ですね、この間までは老婆じゃありませんでしたか?」
「この見た目の方が話を聞いてくれるかと思ったが違うか?それにあんたも以前は金髪の美少年だったと思ったが」
「成長期です」
ああ、会いたくなかった。魔女は会うたび姿を変える。僕はだいたいこの青年の姿で暮らしている。迷い込んだ娘を騙すのにちょうどいいからだ。
「あんたに話したいことがあってな」
「魔女の小言なんて聞きたくないですが」
「この世界のはじまりの話さ」
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