バラ色の部活動
1年生は授業初日から3日間、部活動の体験入部期間となる。期間中に任意の部を体験してみて、最終的にどこへ入るか決める際の判断材料にする。
それは各部の2・3年生にとっては新入部員を獲得するための勧誘の時期──初日、終業時の
「
「いいや、バレー部に!」「テニス部に!」「野球部に!」「サッカー部に!」「剣道部に!」「柔道部に!」「空手部に!」
「「「「「「「「「
それが技術でなく圧倒的な身体能力とセンスによるものなら、バスケ以外でも発揮されることは必至。話を聞きつけバスケ部はもちろん他の運動部も獲得に躍起になっていた。
「はっはっは! 人気者はつれーな‼」
きゃーっ♡
上機嫌に笑う
「「「「……!」」」」
大柄な
長身の
「ドンマイ」
「お前は本当に気にしてなさそうだな」
「いけ好かない奴だけど、僕としては好都合だからね。アイツが注目される分、僕たちはされない。日陰者のほうが気が楽だよ」
「なるほどな」
〔
それは秘密なので、
その言葉に、
「だが、すぐ目立つことになるぞ? 俺たちのアーカディアンの腕が知れれば。お前はS級、俺と
「そうだよリッカくん、覚悟しないと」
そう言った
引っこみ思案な
すでにアイドルではあるが。
ロボットゲーム【
ただ、それはアーカディアン用のプレイヤーネームとその戦績以外に情報のないアカウントとして。本名・年齢・性別・肉声・素顔は非公開。インタビューも全てメールでのやりとり。
だが、これからは事情が変わる。
アーカディアン部──部活としてアーカディアンをプレイし、大会に出場する。匿名のプレイヤーではなくプロフィールを公開した、この学園の生徒として。
4人がそこでスター選手となるのは実力的に確約されている。かつては得意なもののなかった
「そっか。そうだね」
「うん。そうだよ♪」
それに伴って様々なトラブルも予想されるが、
そういうわけで。
4人は今、校舎内のアーカディアン部の部室に向かっていた。そもそもアーカ部に入るため、それのあるこの学園に入学した。
だから他の部を試しもしない。
初めからアーカディアン一択。
「問題は他の部員よね~? どんくらい強いのが何人いるのか。レギュラーは当然アタシらがもらうけど? 選手層は厚いほうがいいもの。アタシらの練習台としても」
調子こいてるところも超かわいい。
「アーカ部は今年できたばかりだから、もう他の部活に入ってる先輩たちは、よっぽどでないと転部はしないだろうね。帰宅部と新入生からどれだけ集まるか」
「アーカディアンは今、世界で最も遊ばれてるゲームじゃない。それを部活でやれるってんだから新入生は殺到するわよ。みんなアタシらの引きたて役ですけど」
「
「はい、現実と虚構を混同しない! それにアンタはアタシの鼻、折ったりしないでしょ?」
「もちろん」
これがアーカディアン部を描く漫画だとしたら、その主人公は
ガラッ
「失礼します」
「「「失礼します」」」
「は~い、いらっしゃーい♪」
「「「「⁉」」」」
室内から返ってきた声に4人はビクッとした。そこにいたのは自分たち1年A組の担任。今朝のHRでセクハラを働いた男子を粛正し、恐怖政治を敷いたセクシー美人教師、
この人は終業HRの時、自分たちと一緒にA組の教室にいた。自分たちはあそこから最短ルートでここまで来たはずだが、道中この人を見なかった。
どうやって先回りしたのか。
気にはなるが訊くのが怖い。
「か、
「はーい、そうでーす♪ ところで
記憶にない。恐怖で意識が飛んでいたか。
しかし正直にそれを白状しても益はない。
「失礼しました、スミレ先生‼」
「はぁ~い♪ よろしい~っ♡」
バラ色の部活動になるはずが、のっけからスミレ色になった。見ると他の3人も、きっと自分がしているのと同じような、愛想笑いを浮かべていた。
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