サクヤ
ガオォォッ‼
秘密結社ザナドゥの怪獣型ロボット【
ンモォォッ‼
2機はその所有者、ザナドゥの大首領、
中庭の中央に置かれた博物館の収蔵物、組織に因縁あるアーク【ブルーム試作1号機】を守る民間警備用アーク【アイルルス】3機の、
「
だから3機の
しかし今、
「
3人はまだ中庭に留まっている。
当然だ、博物館に寄贈された際、燃料や弾薬は全て抜かれて、
先刻よりパイロットの叫びが1号機の中から装甲越しに虚しく響いている。2機の
「
バッ‼ ──
1号機の両目が光った。
1号機の頭部、人間の顔では両目の位置にあるためそう見えるヘッドライトに火が灯った! 同時に1号機の両手が閃き背中の鞘に納まった巨大な刀の柄を掴む!
ズダァァァァン‼
牙が1号機に届く寸前、
ガ……ガガ……ッ
すると
自爆した。
¶
〔
一方、ブルーム試作1号機の刀は全高380㎝の
こちらは元から奉納用に作られた。
生身の人間に扱える代物ではない。
が、アークなら扱える。
その身は長いだけでなく〔細身の曲刀〕という日本刀の通例に反して幅広い。それゆえ簡単に折れる心配もなく、叩きつければ超重量が切断力に変換される。
重すぎて取りまわしが悪いが、当たりさえすればアークよりも大きい
この巨刀を1号機が持つわけは……
手足やバックパックなどの部品を換装することで、その性能と姿を多様に変化させる汎用アーク【ブルーム】──その形態には陸上自衛隊に売りこむため開発されたものがある。
『要らない』とフラれたが。
それは陸上自衛隊のエンブレムである【
その形態は──
標準体型で腕部に鉤縄ロケットアンカー、脚部に電動ローラースケートを内蔵した緑色のブルーム【
その背中にバックパックを装着。
バックパックの左右には一対の、雉の翼を模した機械仕掛けの翼を生やす。翼は淡紅色で桜の花冠を表して、緑色の本体が
バックパックの左右、翼の付根に主武装を吊る。右には日の丸=太陽光線をイメージした長砲身のレーザー砲を砲口を下にして垂らし、左には鞘に納まった刀を切先を下にして垂らす。
そして、この刀は。
桜に縁ある実在の大太刀のレプリカが良いとなり、白羽の矢が立ったのが
そうした次第で。
現代の刀鍛冶の匠の技と、最先端科学技術の粋を集め、外見は本物そっくりに──本物の錆びた部分は再現せず銀色に輝く──中身はより頑丈に鍛えられた
その一振りが、その形態の運用試験のため、その形態へと換装されたブルーム試作1号機の背中に納まった。
1号機はその姿でいる時に試作機の役目を終え、その姿のまま国立科学博物館に寄贈された。その姿、その形態、その名は。
【ブルーム
¶
ドガァァァァン‼
ブルーム試作1号機に【複製・
そのパイロット。
『男の子だけどコノハナサクヤ姫のように美しいし、サクヤは男の名前にも使える』と考えた両親にそう命名されて、その名のとおり美少女と見紛われる美少年に成長した現在12歳の──
停止していた1号機が己の叫びに応えて覚醒したら、点灯した正面モニターにこちらへ襲いくる
即座に機体を操縦して
そうすることで
「ぐッ! ああああああ‼」
2年前、今回と同じように1号機で
コンソールに表示された機体損壊度も軽微。
2年前に
そして爆炎が晴れる。
視界が回復したモニターに映ったのは、もう1機いた
ンモォォッ‼
ガシャァッ‼
一方的に攻撃され続ければ、いずれ回避に失敗するやも。あの巨体に激突されたら衝撃だけでもパイロットが──
「貫け! ブルーム‼」
ズガァッ‼ ──1号機の大太刀の切先が疾走の勢いを乗せて
分厚い大太刀は2度の爆発にさらされても無事だ。念のため、
「あっ」
モニター上で
そして
さっきまで自分が乗っていた
同じ姿の2機の見分けがつかない。
トン──モニターで機体の映っている場所を指で
プルル……
すると、その機体から通信がかかってきた。メインモニターに表示された受話器アイコンをタップして、通信を開く。
『助かったわ
「
僚機に登録してもパイロットが誰かまでは分からなかったが、その声を聞いてやっと
『リッカくん、じっとしてて』
「
『抜けちゃったから、入れなおすね』
「あ……ああ! ありがとう
『どういたしまして♡』
ぶすっ
1号機のコンソールパネル内の、残りわずかな電池残量計に〔充電中〕の表示がついた。
全てのアークはその
そしてアークの中には他のアークへと自らの電力を譲渡できる機種がある。
(ああああああ!)
さっき1号機が起動したのは今のように
(はははははははは恥ずかしい‼)
自分の想いが奇跡を起こし、動くはずのない1号機を動かした──なんて思っていたのが死ぬほど恥ずかしい‼
(……でも)
なにかがストンと、胸に落ちた。
これでよかったと、そう思えた。
「
『ん?』
「
『な、なに突然……アタシも、大好き、よ』
「
『うん』
「
『リッカくん……わたしも大好き♡」
2年前は奇跡的に1号機に乗れて、戦って、勝利して、まるでロボットアニメの主人公のようになれた。
先日テロリストに人質にされた時は、アークに乗りさえすれば自力で打開できると、都合よくアークに乗れる展開を祈ったが、奇跡は2度も起こらなかった。
前者は運が良かった。
後者は運が悪かった。
それだけ。
だけど今回こうなれたのは、運も良かったが、それが全てじゃなかった。奇跡なんかじゃない、そんなたまたま都合よくいっただけの幸運じゃない。
3人の意志と、行動の、結果。
胸が熱くなる……2年前に1号機に、初めて本物のロボットに乗った時のように熱狂はしないのに、むしろあの時より充実していて、それでいて落ちついている。
ワァァァァァッ……
ギャァァァァッ……
中庭の外から聞こえてくる喧噪はやんでいない。向こうにまだ秘密結社の戦力がいる。上空では結社の長、
中庭の壁に切りとられた空に漂う煙。ここもそうだが、周りも火災になっている。2年前の、あの
この修羅場から抜けださねば。
電池残量計の表示がグングン上がっていく。近年の充電技術の進歩は目覚ましく、アークに積まれている大容量の
「2人は
『わたしのアイルちゃんは平気だよ。ブルームに電気あげても、自分の分は
『アタシはそれこそ
「よし。じゃあ、これからのことだけど」
『『うん』』
「秘密結社の機体の性能は、アイルルスとは桁違いだ。その上、敵はアイルルスを倒せるけど、アイルルスは武器がなくって敵を倒せない」
『『うん……』』
「だから、その機体で戦うのは無理だ。2人は敵に遭遇したら、交戦をさけて、全力で逃げて。僕はそれを援護する」
『リッカくん……』
『
「ブルームは実戦用だし、武器もあるから。でも無茶はしない。あくまでも3人で生きのびるのが最優先だ。ただ安全を確保するために、向かってくる奴はやっつける。それだけだよ」
『分かったわ、それならOK』
『気をつけてね、リッカくん』
充電完了、1号機からコードが抜けた。
「行こう‼」
『『了解‼』』
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