龍人と黒鬼
業務用でも、家庭用でも、多くの3Dゲームで操作ユニットは直立状態から頭を前後左右には傾けない。
前傾して、そのまま前転したり。
後傾して、そのまま後転したり。
横斜して、そのまま側転したり。
一時的にはできても、それは特定のアクションのあいだだけ。それが済んだら自動的に元の直立姿勢に戻る。
地面に倒れるとしたら攻撃を受けた時などで、自分から倒れるような操作はできない。
倒れたら自動的に起きあがるまでプレイヤーの操作を受けつけなくなり、横になったまま地面を転がったり、這って進んだりは普通できない。
だがアーカディアンではできる。
アークがそういう乗物だからだ。
ゲームとしては自由度が高すぎてかえって大変とも言えるが、地上で戦っている時はそれほどでもない。頭を前後左右に傾ける入力をしても一定の角度でとまり、それ以上は傾かない。
前傾し続けても前転はしない。
後傾し続けても後転はしない。
横斜し続けても側転はしない。
アークは〔両足の裏が地面に接しているあいだ〕姿勢を垂直に維持する自動姿勢制御システムを搭載しているから。
逆に言えば地に足をつけていない時はそのシステムが働かず、入力を続ける限りは回転を続けるということ。
ジャンプ中、前傾すれば前転する。
ジャンプ中、後傾すれば後転する。
ジャンプ中、横斜すれば側転する。
一回転か、その倍数だけ回って足を下に向けてとまれば、再び両足を地面につけて自動姿勢制御が復活する。
だが地面に対して急な角度で回転をとめると、着地に失敗して転倒する(多少の傾きなら補正してくれるが)。
倒れたら、また足が下を向くよう回転させれば起きあがるし、そうでない方向に回転させれば地面を転がる。
それら全てを駆使する。
のは、上級者のプレイ。
さっきチュートリアルを終えたばかりの初心者である
搭乗機【ブルーム
この、爪を放す瞬間。
機体は後傾している。
するとアークの
これもチュートリアルで覚えた操作。
火災現場で実機のアーク【ブルーム試作1号機】に乗った時、
だが実際は前後だけでなく上下にも動かせて、対応する機体の半身を動かしたほうへと移動させられた。
さらにそのレバーの水平になっているグリップを、握った手が前傾・後傾するように、ひねって回転させることもできたのだ。
ブンッ!
その足下が映る下方サブモニターをのぞくと、徐々に迫りくる高架道路に立った
その高い跳躍力によって高架道路の橋桁から橋桁へと、次々に跳び移って逃げていた
(タイミング、ばっちり!)
ぶぉん!
左右のグリップを両方とも前傾か後傾の同じ方向にひねると、機体全体がその方向に回転する。
だがその場合以外では、右グリップをひねれば機体の右脚を、左グリップをひねれば機体の左脚を、ひねったのと同じ方向へと振らせる。
なお、これらの動作もグリップをひねるレバーと同じ側にあるペダルを踏むことで増幅できる。
グイッ‼
それすなわち、
「
『ぎゃーッ‼』
ずだぁん‼
このゲームでアークには部位ごとに耐久値が設定されており、
ズシャッ!
頭部を失った
パァン!
今、
アークの頭部の前・左右・上には、筐体の前・左右・上の壁面メインモニターに映す画像を撮影するカメラがついている(後ろにはコンソールの後方サブモニター用カメラ)。
しかも自動照準まで使えなくなる。
その機能も頭部が司っているから。
手動照準ならそれ自体は可能だが、見えない敵に自力で照準を合わせるなんて芸当、
バババッ‼
ドカァン‼
このゲームではアークは胴体の耐久値が0になると大破判定を受ける。すると胴体だけでなく、無事だった部位も含めて全身のポリゴンが消失して舞台から退場する。
「
相互ロックオン状態が解けたので
かなり悔しがっている。
心が痛む。こういうゲームなのは仕方ないが、
バッ!
そして
『きゃーっ‼』
「くっそぉ‼」
もちろんゲームなので
「カタキは討つよ、スノーフレーク‼」
自分が
ババッ──!
バガァァン‼
(まずい!)
それが直刀に変わっているのは、
おそらく、その前に
向こうだけが射撃武器を使える状態!
タンッ!
レバーはパイロットが力を加えない限りは動かない仕組みで、手を放しても勝手に
コンソールで入力したのは『左右の主武装を
カシャッ──ズラッ‼
それから左手も柄を掴んで、両手持ちになる。
左右の手に1つずつ装備できる主武装に、左右とも同じものを選択することで、アークは1つの武器を両手持ちで使用できる。
右主武装は右レバーの照準ボタンとトリガーで、左主武装は左レバーの照準ボタンとトリガーで操作するが、両手持ちの場合は左右どちらから入力しても同じ結果になる。
「行っけぇ‼」
『させるか‼』
がきぃぃぃぃん‼ ──
ぎゃりぎゃりぎゃりッ‼
刀と刀を交差させた鍔ぜりあいの姿勢のまま、2機は
「やっぱ最後は剣戟だよね!」
『フッ──同感だ、リッカ!』
色と細部以外はよく似た同型機の2機が、拵は違っても刀身は変わらない──どちらもオリジナルは古墳時代に使われていた──直刀を手にして鍔ぜりあう。
実に絵になる姿だった。
だが、そこまでだった。
キーン……カーン……パキーン……
2機の刀が打ちあわされる音はどうにもテンポが悪く、迫力に欠ける。始まったチャンバラは、全くサマになっていなかった。
近接格闘武器の扱いは──
パイロットが照準ボタンを押せば、機体は腕を伸ばして標的へ武器を突きだし。押しこんだままの照準ボタンの表面をスワイプすると、伸ばした腕ごと武器を振る。
トリガーを引けば、武器で敵の攻撃を防御する。照準ボタンを押しながらトリガーを引けば、武器を標的へと投げつける。
これは、コツが要る。
まだ初心者の
「えいっ!」
『っと!』
「あ──」
『ああっ⁉』
グサッ──ボカーン!
なんとも締まらない幕引きだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます