第2話 亜空間
レイズ・ローフォン。彼女は確かにそう言った。
「というか、ここはどこ!?」
黒島は再びパニックに陥る。
「はわわ、落ち着いてください。大丈夫です、あなたは丁寧にアブダクションされただけですから」
「アブダクションって拉致のことだよね!?何!?俺宇宙人にさらわれたの!?」
「あわわ……」
お互いがお互いにパニックになり、収集がつかなくなってくる。
しばらくして、何とか落ち着きを取り戻した。
「改めて自己紹介します。私は紅の旗艦の生体艦長、レイズ・ローフォンです」
「黒島祐樹です……」
「祐樹さん、この状況で言うのもなんですが、あなたにお願いがあります」
「な、何でしょう……」
「あなた方から見て敵……、すなわち宇宙人を倒してほしいんです!」
「宇宙人って、今来てる地球外知的生命体のことですか?」
「はい」
「……え?突然何を言っているんですか?」
「混乱されるのも無理はありません。そこで、少し私の話を聞いてもらえないでしょうか」
「え、えぇ」
そういって、レイズは少し語り口調気味に話し始める。
「私はもともと、その知的生命体と同じ種族の者です。私たちは自身のことを『流浪の民』と呼んでいます」
「同じって、つまりあなたは俺からみると敵……?」
「そういうことになります」
「いやだ!俺死にたくない!」
「勝手に殺人鬼みたいな扱いやめてください!そんなことしませんよ!」
「じゃあなんだって言うんです!?」
「……もともと私は記憶がありません。自分がいつ、どこで生まれたのか、さっぱりわからないんです」
「はぁ……」
「しかし、記憶をなくす以前から、この言葉は憶えているんです。『白の旗艦を撃破せよ』と……」
「白の旗艦……?」
「白の旗艦とは、流浪の民をまとめ上げる総旗艦。つまり大ボスです」
「その白の旗艦を、俺にどうしろって言うんです?」
「あなたには、その白の旗艦を倒してほしいんです」
「そんな無茶な……」
「いえ、できます。そのための私がいるんですから」
そういって、レイズは胸を張る。
とはいっても、簡単には了承を得られないだろう。
「仮に、あなたが本当に敵だとして、その証拠でもあるんですか」
「むぅ、疑ってますね?ならいいでしょう。私が傍受した流浪の民の攻撃目標の一覧でも提示しますか?」
「えぇ、もちろん。それが本当に攻撃されたら考えてもいいでしょう。とにかく、ここから出してください」
「そうしたいのは山々なんですが、少々問題が発生しましてね……」
「問題?」
「さっき言った白の旗艦、その隷下にある艦艇に見つかったようです」
そういって、レイズはクルリと身を翻す。
すると、周囲から低い音が鳴り響く。
しかし、何か変化が起きたようには見えない。と、思った次の瞬間である。
空間中に、突如として何か赤い物が浮かび上がると同時に、警報のようなけたたましい音が鳴り響く。
「な、なんだ!?」
「あの赤い枠の真ん中に、さっき言った白の艦艇がいます」
黒島は冷静になって、その部分をよく見てみる。
「何も見えないんですが……」
「それもそうですね。ここは亜空間、通常空間を切り取ってできた偽物の空間ですから。光すらまともにありません」
「なんだそりゃ……」
「というわけで、レーダーに切り替えます」
すると、周辺の空間が切り替わる。その時、黒島は周囲の空間自体がモニターのようなものであると理解した。
そして正面には、複数の点のようなものが見える。
「あの点のようなものが敵です」
「それでどうするんですか?俺は何もできませんけど」
「いえ、できます。ちょっと失礼しますね」
そういって、レイズは黒島の頭に、バンドのような物を取り付ける。
「なんですかこれ?」
「これは情報を相互通信させるためのものです。これがあれば、視界の確保から各種武装の状態まで一瞬で把握できるようになります」
次の瞬間、黒島の頭の中には多大な情報の波が押し寄せてくる。
「いっ……つぅ」
「まぁ最初は慣れるまでが大変ですけどね」
「最初にそれを言ってくださいよ」
しかし、少しずつではあるものの、だんだんと慣れていく感覚が分かってくる。
情報によれば、白の艦艇と自分たちの距離は3光秒もないことは把握した。
「とにかく、俺がやるしかないんですね?」
「もちろんです。もしもの時は私がフォローします」
「しょうがない……」
黒島は、椅子にしっかりと座る。すると、シートベルトのようなものが黒島を椅子に固定させる。
そして、体の両脇にあるレバーのようなものをしっかりとつかむと、黒島は目をつむった。
視界をさえぎることで、情報に集中しようと考えたのだ。
「では、戦闘開始です」
レイズの合図とともに、黒島は思考を集中させる。
まずは前進だ。イメージは船の前進である。
すると、ゆっくりとだが艦が前に進みだした。
黒島はそのまま、攻撃をしてみる。
艦首に埋め込まれているビーム砲が作動し、白の艦艇に向けて発射される。
しかし、白の艦艇はそれを回避していく。
そこに合わせて、黒島はミサイルを発射する。
艦後方から発射されたミサイルは100を超え、そのまま白の艦艇に向けて飛翔する。
そのミサイル攻撃には耐えられなかったか、白の艦艇は次々と撃沈していく。
こうして、ビーム砲とミサイル攻撃を交互に行うことで、効率的に敵を沈めていくことに成功した。
時間にして、ものの10分程度であったものの、黒島は無事に初戦を勝利で飾ることができたのだ。
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