誘惑【ボーダーライン】


部屋に戻ると、スマホを見ていた彼がこちらを向いた。


「沙弥、髪濡らしちゃったの? ちゃんと乾かさないとバレちゃうよ」


彼の元に向かう私は不意に足を止めた。


足元には一本の線が見えた。

これは超えてはならない線。


だけど。


「おいで」


彼は優し気に手を差し出す。


私は請われるままにその一線を越えた。


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