第47話 大事な話
素敵な初体験の後、私と彩愛先輩は仲よくシャワーを浴びて晩ごはんを食べ、同じベッドでぐっすり眠った。
いままでになく満ち足りた気分で目を覚まし、彩愛先輩の寝顔を一瞥してからカーテンを開ける。
「彩愛先輩、朝ですよ」
「んん……かれん、それはさすがに……どへんたい……」
肩を持って軽く揺すると、とんでもない寝言が飛び出た。
いったいどんな夢を見ているのだろうか。察するに私が変態的なことを要求しているっぽいので、あまり知りたくないような気もする。
しばらく起きそうにないので、無防備に晒されているぷにぷにのほっぺたにチュッとキスを落とす。
恋人ならこういうのも有りじゃないかと思って何気なく実行してみたけど、いざやってみると非常に恥ずかしい。
私は無言で自分の頬をパンッと叩き、彩愛先輩を起こさないように気を付けつつベッドを離れる。
せっかくの休日だ。声をかけても起きないなら、好きなだけ眠らせてあげよう。
「――それはさすがに上級者向けすぎるわよっ!」
彩愛先輩が布団を跳ね除けるように起き上がり、意味不明なことを叫ぶ。
私は驚いて振り向きながら、「なんのことですか!?」と反射的に問い返していた。
「あれ? え? あー、なるほど……なんでもないわ、夢の話よ」
辺りをキョロキョロ見回して、直前まで自分が夢の中にいたことを悟る彩愛先輩。
***
洗顔や歯磨きを済ませた後、朝食の前に一旦部屋に戻った。
というのも、彩愛先輩から大事な話があるらしい。
彩愛先輩が床に正座したので、私も同じ姿勢で対面に座る。
「これは極めて重大かつ真面目な悩みなんだけど、聞いてくれるかしら?」
「はい、もちろんです」
まだ内容には見当もつかないけど、最愛の人が悩んでいるのに、それを放っておけるはずがない。
私は即答でうなずき、彩愛先輩の言葉を待つ。
「どのぐらいの頻度で、エッチしてくれる?」
「……は?」
あまりにも予想外すぎて、一瞬だけ脳内に宇宙が浮かんだ。
一種の現実逃避だったのかと自己分析し、すぐさま冷静な思考を取り戻す。
「極めて重大かつ真面目な悩みって、そんなことだったんですか?」
「そんなことってなによ! めちゃくちゃ大事なことでしょうが! 三大欲求として食欲や睡眠欲に並ぶ性欲についての話なのよ!?」
「あっ、えっ? ご、ごめんなさい」
グッと拳を握って力説する彩愛先輩に気圧され、つい謝ってしまった。
告白した時にも似たようなことを聞いた気がする。
「で、どうなの? あんたの正直な気持ちを聞かせてちょうだい」
「どうって言われても……彩愛先輩がしたいなら、いつでもいいですけど」
私は彩愛先輩ほど性欲旺盛ではないけど、断じてエッチするのが嫌なわけではない。
彩愛先輩が求めてくれるなら毎日でも大歓迎、というのが私の正直な気持ちだ。
「ホントに? 仕方なく付き合ってあげるとか、そういう気遣いじゃない?」
「正真正銘、私の本音です。私だって、人並み程度にはそういう欲求がありますから」
「よかったぁ……ドン引きされたらどうしようかと思ったわ」
私の答えを聞いて、彩愛先輩がホッと胸を撫で下ろす。
「たくさんエッチした挙句、飽きたとか言って捨てないでくださいね」
「バカ、次にそんなこと言ったらブチ切れるわよ。たとえこの先なにが起きても、あんたへの気持ちが薄れることなんて有り得ないわ」
密かに抱いていた不安を冗談っぽく口にすると、間髪入れずに怒られてしまった。
「すみませんでした」
ペコリと頭を下げつつも、心の中は罪悪感よりも喜びの方が大きい。
気持ちが薄れることなんて有り得ない。
当たり前のように断言してくれたことが嬉しくて、自然と笑みがこぼれた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます