第46話 一線を越えて
気付いた時には、すっかり陽が落ちて辺りが真っ暗になっていた。
感覚的には、ついさっきまで昼間だったのに。よほど熱中していたのだろう。
ベッドの上で激しく交わった私と彩愛先輩は、いまは寄り添って一つの枕に頭を預け、酷使した体を休めている。
あれほど乱れていた呼吸も、すっかり整った。
「彩愛先輩、そろそろシャワー浴びませんか?」
相手は文字通り目と鼻の先にいるので、驚かせてしまわないように声を抑えて呼びかける。
「そうね、全身ベトベトだし。さすがにこのままだと風邪を引いちゃうわ」
一線を越えた直後だというのに、二人とも特に変わった様子はない。
実は気恥ずかしさでギクシャクしてしまうのではないかと心配していたから、杞憂に終わってホッとする。
いつも通りではあるんだけど、触れ合っていなくても一番深いところで通じ合えているような、不思議な感覚を抱いている。
ベッドを離れる前にもう一回だけキスをして、裸のまま服を持って浴室に向かう。
家に二人きりとはいえ、一糸まとわぬ姿で廊下を歩くのは妙な気分だ。
「やっぱり、生だと普段以上に弾むわね」
「うるさいですよ」
彩愛先輩の発言に食い気味で反応しつつ、胸が揺れないよう腕で押さえつける。
一階に下りて脱衣所の扉を開け、着替えを棚に置いて浴室に足を踏み入れたところで、胸から腕を離す。
「けっこう強く揉んじゃった時もあったけど、痛くない?」
「全然痛くないですよ。むしろ気持ちよさが残ってるぐらいです」
「そんなに気持ちよかったの? あたしに揉まれたり撫でられたり吸われたりするのが?」
「うっ……そ、そうですよ、すごく気持ちよかったです。悔しいけど、その……またしてほしいって、思っちゃいました。もちろん、胸だけじゃなく、他のところも……」
正直に答えながら、恥ずかしさを紛らわせるためにシャワーヘッドを握る。
「ふふっ、それはよかったわ」
彩愛先輩は茶化したり煽ったりせず、嬉しそうに満面の笑みを浮かべる。
その可憐な笑顔に、私は思わず見惚れてしまう。
変にごまかしたりせず、正直に答えてよかった。
「次もあんあん喘がせてあげるから、楽しみにしてなさいよね」
「はぁ~……」
余計にもほどがあるデリカシー皆無な一言に呆れ果て、深い溜息が漏れる。
でも、これはこれで彩愛先輩らしくていいのかも――なんて風に思ってしまうあたり、大人の階段を昇ったことによって私の判断基準は甘くなったのかもしれない。
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