第16話 草むしりで汗だくに①
今日は彩愛先輩と協力して、犬山家・猿川家の草むしりを行う。
それぞれが自宅の庭で作業するのではなく、二人一緒に一軒ずつ順番に雑草を抜く。
最初はお父さんも一緒だったものの、小学生時代の私が「お姉ちゃんと二人でやりたい!」と申し出たことによって、草むしりは私と彩愛先輩の担当となった。
犬猿の仲となった今でも、その習慣は続いている。
「よし、完璧っ」
上はノースリーブのシャツ、下は中学生の頃に買ったジャージ。両手に軍手をはめて、普段は下ろしている髪を後頭部で結わえる。
日焼け止めは塗ったし、タオルとスポーツドリンクも用意した。
準備は万端。下駄箱から引っ張り出した運動靴を履いて、通い慣れた猿川家の庭に赴く。
そこではすでに、私と同じような格好をした彩愛先輩が仁王立ちで待ち構えていた。
「来たわね! さっそく始めるわよ!」
「はい、望むところです!」
タオルとスポーツドリンクを縁側に置き、グッと拳を握る。
草むしりするだけなのに、私たち二人の気合は尋常ではない。
庭の両端に立ち、身を屈めて雑草に手を伸ばす。
最初は家の手伝い程度の認識だった草むしり。それがいまや、勝負事として定着している。
相手よりも多く、正確に、庭の雑草を引っこ抜く。
「勝つのはあたしよ!」
「私は絶対に負けません!」
戦いの火蓋が切られ、私たちはテスト中に勝るとも劣らない集中力を発揮する。
雑草を根っこから引き抜き、あらかじめ決めておいた場所に集める。
我ながら一連の動作が洗練されていて、わずかばかりも無駄がない。子供の頃から定期的に草むしりを手伝っている成果だ。
しかし、それは彩愛先輩も同じ。間違っても油断なんてしてはいけない。
万が一にも後れを取るようなことになれば、大人げなくて幼稚で生意気なあの先輩は数日にわたって無駄に勝ち誇ってくる。
私たちはやる気の炎を燃え盛らせながら、一心不乱に雑草を抜き続けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます