第13話 予定とは違ったけど①

 話題の映画を観るため、地元から二駅ほど離れた大型のショッピングモールへと足を運んだ。


 三階にある映画館で上映中の映画を確認し、二人そろって愕然とする。



「……上映、終わってるわね」



「……終わってますね」



 いまさらながらにスマホで調べると、先週末が公開最終日だったらしい。


 事前の下調べがどれほど重要か身をもって思い知り、深く反省する。


 気持ちを切り替えて話し合った結果、せっかくだから別の映画を観ることに。



「あたしはあれがいいわ」



「私はあれがいいです」



 と、ほとんど同じタイミングで案内板を指差す。


 彩愛先輩は年齢制限付きのホラー映画、私は女の子同士の恋模様を描いた恋愛映画。



「あたしの方が先に決めたんだから、あたしに合わせなさいよ」



「早い者勝ちだなんて言ってなかったじゃないですか」



「ホラー!」



「恋愛!」



 意見が衝突し、いつも通りの醜い言い争いが勃発する。


 周りに迷惑をかけるわけにはいかないので、映画館の横からトイレにつながる通路のベンチに腰かけ、声を抑えて言葉で殴り合う。


***


 かれこれ半時間ほど経った辺りで、近くにあった自販機で飲み物を買う。


 ひたすら声を出し続けたせいで、すっかりのどが渇いてしまった。



「このままじゃ埒が明かないわね」



「言い争いで一日潰れるのは嫌ですし、二人のオススメを交互に観るのはどうですか?」



「そうね、それがいいわ」



 出費は倍になるけど、これなら争いは起きない。


 私たちは映画館に戻って上映スケジュールを確認し、二作品続けて映画鑑賞を楽しんだ。


***


「――まさか感動して泣きそうになるとは思わなかったわ」



「泣きそうっていうか、最後の方で大泣きしてませんでした?」



「うるさいわね。あんたこそ、ホラー映画が怖すぎておしっこ漏らしたりしたんじゃないの?」



「も、漏らしてないですっ。スカートと座席は濡らしてないからセーフですっ」



「え……それってつまり、パンツが濡れる程度には……」



「お願いですから、それ以上は言わないでください……」



 映画を観終わって軽く感想を話した後、映画館を離れる。


 土曜の昼間ということで人が多く、落ち着きのない彩愛先輩がはぐれて迷子になっても不思議じゃない。


 同伴者として仕方なく、本当は面倒だし恥ずかしいから嫌だけど、彩愛先輩の手をギュッと握る。



「彩愛先輩がはぐれないように、手を繋いであげますね」



「はぁ? 生意気なこと言ってんじゃないわよ。あたしが先輩として歌恋の手を引いてあげるんだから」



 悪態をつきながら、小さい手からは想像もつかない強さで握り返してきた。


 私も張り合うように力を込める。


 絡めた指が悲鳴を上げるほどの強さで握り合い、人混みの中を歩く。


 これなら、なにが起きてもはぐれたりしないだろう。

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