第7話 散歩中の出来事①
ドンッ! ドンッ! ドンッ!
せっかくの日曜なのに、窓を叩く音によって目が覚めた。
スマホを手に取って時間を確認したところ、平日に彩愛先輩がアラームをセットしている時刻より一時間以上も早い。
あの人、普段からこの時間に起きてくれればいいのに……。
「朝からうるさいんですけどっ」
憤りを露にしつつ、カーテンと窓を開け放つ。
「いい天気だから散歩に行くわよ! 5秒で支度しなさい!」
私の怒声に対抗するかのように、彩愛先輩も大声で返してきた。
相変わらずの5秒指定はともかく、散歩かぁ……うん、いいかもしれない。
「5秒は無理です。準備出来たら連絡しますね」
「ヒマだしあんたの部屋で待たせてもらうわ。あっ、玄関から入るから安心しなさい」
そう言って、彩愛先輩は部屋の向こうへと消えた。
おそらく一分としないうちに、我が家の玄関から物音が聞こえてくるだろう。
彩愛先輩の勢いに圧倒されたおかげですっかり目が覚め、ベッドの上で軽くストレッチしてから顔を洗いに行く。
歯を磨いたり着替えたりしている間に彩愛先輩が私のベッドで二度寝を始めていたので、ホットパンツから伸びる華奢な太ももに平手打ちをお見舞いした。
「っ!?」
何事かと驚きながら跳ね起きる彩愛先輩に、冷ややかな視線を送る。
「無理やり起こした相手のベッドで二度寝とか、いい度胸ですね」
「わ、悪かったわよ」
さすがの彩愛先輩も自分の非を認め、素直に謝ってくれた。
反省しているなら、これ以上責める必要はない。
「それじゃあ、行きましょうか」
「よーしっ、歩きまくるわよ!」
ただの散歩とは思えないほどに張り切っている彩愛先輩と共に家を出て、田んぼ沿いの歩道をのんびりと進む。
春先の陽射しが心地よく、建物や交通量が皆無に等しいので空気も澄んでいる。
まだ高校生になったばかりだけど、老後もこんな環境で散歩したいものだ。
いつも無駄に騒々しい彩愛先輩も、数十年後には多少おとなしくなっているのだろうか。
「ちょっと歌恋、あんたの胸どうにかならないわけ? ぶるんぶるん揺れて目障りなのよ」
「どうにかなる方法があるなら、私が一番知りたいですよ。目障りだって言うなら、前だけ見て歩けば済む話じゃないですか」
「前だけ見てるわよ! それでも視界に入るから目障りだって言ってんの! こっちは自分の胸を見ようと下を向いても地面しか見えないのに! あたしだって足元が見えないぐらいのおっぱいが欲しい!」
「はぁ、そうですか」
正直どうでもいい内容だったので、適当に聞き流すことにした。
私としては彩愛先輩の慎ましやかな胸が羨ましいし、その魅力を誇るべきだと強く思う。
悔しいから、言いたくはないけど。
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