異世界はい。

やさしさ

第1話「はい」

「食らえ! 王族の絶大なる力! ファイヤービーム!」


 ドカン!

 王子プリンスデスのファイヤービーム光が魔王の心臓を貫く。

 魔王はグゴゴゴゴゴとうめき声を上げながら、焼かれ、焦げていった!


「やったぜこの国の夜明けだ!」


 これで魔王は討たれた!

 この国の民を苦しめていた元凶が、絶たれたのだ!

 王子プリンスデスは振り返り、仲間たちに笑顔を向ける。

 そこでプリンスデスの活躍を見守ってくれている仲間に。


「さあ帰ろう、国民たちが待っている!」


 しかしプリンスデスが見たものは、予想とは全く違う惨状だった。

 仲間たち――戦士ガッツ、魔法使いプリクア、僧侶クアレアは死体となってそこに転がっている。まるでだんごろむしみたいに転がっている。

 

 その代わりに、一人の男が、仲間たちを殺したと思われる不埒な男が、狂ったようにおぞましい笑い声を立てていたのだった。


「王子様おはよう! おれは魔王の跡をつぐ人間、デス・カムズ!」


「デス・カムズだと!? 聞いたことない」

「名乗ったのははじめてだからな。魔王が討たれたいま、おれは魔王のバックアップとして魔王を復活させるために悪行をたくさん行いダークエネルギーを集めなければならない。手始めに王子、貴様の仲間たちを不意打ちで全滅させてやったのよ!」

「同じ人間なのに魔王に与するとは! 討ってやる!」


 王子プリンスデスの剣がデス・カムズの心臓を狙う。

 しかしその鋭い突きはむなしく空気を切り裂いた。

 デス・カムズの回避が早かったのだ!


「魔王の力の残滓を食らえ!」


 デス・カムズの手から飛び出たどす黒い未知質感物質(デスマター)が、あっという間にプリンスデスの首根っこをつかんだ。

 プリンスデスはしばらく呻いていたが、やがて力尽き手足はだらんと力を失う。


「ふほほほほほほほ。見ていろ人間たち。魔王の使い、デス・カムズ様がお前たちを滅ぼしてくれるからな。そして魔王を復活させ理想の世界を創り上げるのだ」


 魔王は死んだ。

 しかし、王子プリンスデス率いる英雄たちも死んだ。

 そして今この段階ではだれも知らないことだが、

 魔王の使いデス・カムズが人間界に降り立ったのだ。


 どうなる人間たちの国!?

 そしてデス・カムズとはいったいどんな人間なのか?

 なぜ人間ながらに魔王に魂を売っているのか?


 それはこの物語が進むにつれ、わかっていくことだろう……。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異世界はい。 やさしさ @yasasimi1010

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る