みちしるべ(3)

 うちのママは、鍋みたいなバスケットに集めては、定期的にペットボトルのキャップをスーパーの回収ボックスに届けている。

「ホイッ!」

 12個目、成功!

「私、才能あるのかも」

 2メートルくらいだから、自分でもそこまで言えるほどの技じゃないんだろうけど、もう12個連続でバスケットにキャップが得点されてるのは本当。

 ママが使ってるキッチンの踏み台は、イケアで見つけた木製3段ステップなのって前に聞いたから、とりあえず私は今その最上段にしゃがんでキャップのシュートに没頭してる。

『楽しそうだ』

 オープンカウンターに立ってる守護神が、私のその姿を楽しそうだと思ったみたいだから、それはそれで良かったのかな。

 それにしても不思議だった、昨日の出来事。

 私は学校にいても、授業中も、家でテレビを観て、ご飯を食べてる間も、自分の中の整理がうまくできてないのか、結構ボーっとしてる。

「守護神も見たよね、あの画像」

『見させてもらった』

「どう思った?」

『近代的な都市のイメージという表現だろうか』

「まあそうなんだけど……」

 

 その画像、見せなさいよ。

 その写真、まさかここなの?!


『だけど?』

「私はあの風景が、三賀山だとしか思えなかったの」

『それがどのような理屈なのか、私には分かり得ない』

「それは……まあ、かんだよ」

 私は説明できなかった。

 それにあの少年の変なコスプレとか宙に浮いた画像とか、拒絶反応で気持ち悪くなりそう。

「でもひとつ分かったんだよね」

『あれか。君の提案は説得力があった』


 ――守護神、試したいことがあるんだ私。

 何だろうか。

 あの亀集団は、ある程度私たちの行動を読んで先回りするでしょ?

 そのようだ。

 でもそれって、私の思い付き行動には付いて来られないと思うんだけど?

 どうだろうか。だが仮説としては悪くないと思う。

 じゃあ、いってみよ!やってみよ!


「それだって単なる思い付きだったのに、アイツらは私の行動すべてが読めるわけじゃないってことだけじゃなくて、本当に真っ赤な巨大キノコが存在してることまで突き止めちゃった」

『しかし突然あのタイミングで君が乗り出した時は、私もきもを冷やした』

「あの子、アレに乗って移動して来たのかな。私は逃げるのに必死であのキノコがどうなったのかまで見られなかったから」

『未確認だ』

「てか何しに来るわけ?」

 あっ、そういえば……。


 ――うん、たぶんそう。もう回収も終わると思うけど、うん。

 あの子、電話の相手か誰かにそう言ってた。山奥で回収?何を?さっぱり見当も付かないよ。


『いずれにせよ、何らかの目的があって行動しているのは間違いないようだ』

「おばあちゃんの本がそれらに関係してるのは確実で、アイツらが私の邪魔をしたのも事実。それにあの ちず が私の進む道標みちしるべなら、奪われたままになんて絶対できない!」


「13個目、成功!」

『そのバスケットは、君の目の前にあるからキャップが入るのだろう?』

「うん、そうだね。でも入れるよ、目をつぶっても」

『誰も見たことがないバスケットへは、おそらく君にしかシュートできない』

「そうかもね」

『それでも必ず成功すると私は信じている』

「14個目、成功!!」

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