私と自分(2)
ポカンと
とりあえずこの風が巻き起こっている理由はそのせいだってことにして、私は振り上げたポニーテールでこの場のシラケた空気を裂いて、ひとり校舎に入ることにした。
いつも同じ毎日。
いつも同じ生活。
いつも同じ学校。
いつも同じ教室と同じクラスの同級生たち。席も同じ、そこからの風景も同じ。
「まだ来てないんだ……」
ただ一個だけ救われてるのは、席が窓際の列だから右側は隣の男子だけど、左は窓を挟んで外の景色が開放的だってこと。
だけど隣の男子は、その斜め前のヤツと、またその斜め後ろのヤツといつもペチャクチャとくだらなくてキモイ話ばかりする。だから私の隣は“キモオ”で、前が“ペチャオ”、後ろが“クチャオ”って私は呼んでる。
そして今日は特に
「マジで海外の被災地ヤバくね?」
「死者数百人だってよ」
「コワすぎ」
「今年に入ってもう何回?」
「地球もうヤバいっしょ」
「日本もそろそろデカいのが来そうだって言われてるし」
「どっか違う惑星に逃げたいわ」
勝手に行けば?
思わず声に出そうになった、危ない。だけど私の顔は窓の外を向いたまま、君たちには無関心、を
「惑星ってどこよ?」
「どこでもいいからさー」
「どうやって行けんだよ」
「連れてってくんないかなー、宇宙人」
「んなワケなーだろ、人体実験されて標本じゃね?」
「でも被災地で目撃されてんでしょ?UFO的な?」
的な?って何?バカみたい。
いよいよ私は無関心を装うというよりも、耳を
その時だった……。
外、揺れてる?
グラグラと校庭が揺れてるように見える。一限が体育のクラスの生徒が
そしてどんどん揺れは強くなって、地面にはやがて亀裂が入り、空は暗く
でもそれは暗く空が淀んだのではなく、ついに現れたのだった――
「ヤバいよ!!UFOがきてる!!」
声に出してしまっていた。
それは私の空想だった。
けれど私の声は空想世界の中で発せられたのではなく、現実世界の教室に響き渡っていた。
「ヤバいのはお前だろ、
「ギャハハハハ」
「コワすぎ」
「ブッハハハハ」
「キモすぎ」
サイアク。
終わった……私の中学校生活はこれで。
これまで大勢とツルんだりせずに、落ち着いた大人女子路線を
「ギャハハハハ」
「ブッハハハハ」
それは、ものすごく汚い物で体中が汚染されていくような感覚。
とうとう私は気持ち悪くなって、そう感じたら教室の中が
「
私の顔面は、教室の冷たく硬い床に打ち付けられずに、柔らかいニットの大きな胸元に
とてもいい匂い。大好きな匂い。
「大丈夫?!
「あっ、
「遅刻しちゃったの、それより――」
私のたった一人の親友は、アイルドル級の可愛らしさに運動神経抜群の有名人。中一の時からずっと一緒の世界一大切な人。
「何見てんだよ、
「そう、見てるよ、アンタたち
「知らねーよ、ただ笑ってただけだし。まず遅刻した奴に言われたくねーし」
「
私は顔を上げて、短い前髪を直しながら彼女の手を握り返した。
「はいはい、もういいだろ?
担任の声に
後ろから見る親友の姿は
「ねえ、
私の心の声が、
振り向いた彼女の内巻きにした髪が肩先でふわっと揺れた。
「帰り、あそこ行く?」
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